世那 東北魂680球も…仙台育英26年ぶりの再挑戦夢散

[ 2015年8月21日 05:30 ]

<仙台育英・東海大相模>全国制覇を決めマウンドで喜ぶ東海大相模ナインを前に、ガックリと整列に向かう佐藤世(右から3人目)ら仙台育英ナイン

第97回全国高校野球選手権大会 仙台育英6-10東海大相模

(8月20日 甲子園)
 涙をこらえることはできなかった。仙台育英のエース佐藤世は「自分があんな投球をしてしまったので(涙は)我慢しようと思っていた」。一塁側アルプス席からの大声援、泣きじゃくる仲間から感謝の言葉を伝えられると、もう限界だった。

 秀光中1年時に東日本大震災に見舞われた。津波は多賀城市の学校近くまで押し寄せた。学校で一晩を明かし「見たくない景色も見た」と振り返る。地元の宮城を、東北を勇気づけるために初優勝を届けたかった。東北勢として春夏通じて11度目の挑戦でも「白河の関越え」はならず、「自分たちよりつらい思いをしていた方々に支えられた。東北の皆さんに申し訳ない」と悔やんだ。

 甲子園では全5試合に登板した。前日の準決勝・早実戦では121球を投げ抜き完封勝利。疲れの残る中、決勝の先発マウンドに立った。4回までに6失点。それでも仲間が追いついてくれた。佐々木順一朗監督から「お世話になった人のことを考えて投げろ」と言われ、5回から4イニングは無安打無失点。スタンドは仙台育英を後押しするムードになった。

 6―6の9回、先頭の小笠原に初球のフォークが甘く入った。自身を救ってきた得意球。捕手・郡司は「低めで空振りを奪うフォーク」を要求したが、右腕は「ストライクを取りにいってしまった」。打球は右中間席で跳ねた。その後も4安打を浴び4失点。わずかな隙が命取りになった。139球の完投負け。佐々木監督は「(佐藤)世那はフラフラだったけど、彼しかいない」とエースをねぎらうと、こう続けた。「歴史が変わったと言いたかったけど、何もできなかった」。

 指揮官は昨秋の明治神宮大会を制しても、選手の気が緩まないように年末に四国でお遍路を敢行。今年1月11日、午前11時11分に学校近くの塩釜神社に必勝祈願に出向いた。一番にこだわり続けた1年。あと一歩、届かなかった。

 涙を拭いた佐藤世は言った。「優勝は後輩に託したい」。歴史は変わらなかった。でも、エースが投じた680球は、高校野球100年にふさわしい投球だった。(川島 毅洋)

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