マー君完投で空中散歩挑戦 ヤ軍怖いもの知らずGM、次は海底?宇宙?

[ 2015年8月19日 08:30 ]

ヤンキースのキャッシュマンGM(左)(AP)

 ヤンキース・田中がチームの今季初完投勝利を飾った翌16日のこと。試合前練習中のグラウンドにブライアン・キャッシュマンGMが現れ、目配せで番記者たちを呼んだ。

 「誰かのトレードか?はたまた故障者か?」。緊張した記者十数人が囲むと、表情は和やか。すぐに取材ではなく雑談だなと分かった。

 「実はきのう、CNタワーのエッジ・ウォークに挑戦してきたんだよ。凄く怖かったけど、最高の眺めだった」

 田中の快投でブルージェイズとの首位攻防戦を制し、天にも昇りたい気持ちだったのだろう。

 敵地ロジャーズ・エンターに隣接するCNタワーは全長553メートルの、トロントのランドマーク。その116階、地上356メートル地点にある横幅1・5メートルの外周を、体をハーネスで支えて歩く「エッジ・ウォーク」はスリル満点な人気アトラクションだ。30分間の空中散歩で市街地やオンタリオ湖が一望できる。

 「daredevil GM(怖いもの知らずGM)」とも地元紙に呼ばれるキャッシュマンGM。13年3月には負傷軍人援護団体の慈善イベントでスカイダイビングに挑戦したことも。1度目は成功したが、2度目は着地に失敗し、右足首を脱臼して腓(ひ)骨を骨折した。

 キャンプ中の出来事に一部のファンから批判の声もあったが、確かにGMの業務は携帯電話とパソコンである程度はこなせる。当時は「不本意な形だが、この団体が注目されるならうれしい」とコメントしたものだ。

 他にもコネティカット州スタンフォードの高層ビルからのラペリング(降下)や、ホームレスの子ども支援団体が主催する真冬のマンハッタンでのホームレス1日体験などなど。主にチャリティーが目的だが、果敢に多くのことにチャレンジしてきた。

 「下は網状で透けて丸見えで、エッジ・ウォークは本当に怖かった。スカイダイビングやラペリングよりもずっと」と空中散歩を振り返った。

 7月末のトレード期限では大型補強を我慢した同GM。課題と言われていた先発投手は、プライス(タイガース→ブルージェイズ)、ハメルズ(フィリーズ→レンジャーズ)、クエト(レッズ→ロイヤルズ)らFAを控えて売りに出されていた大物が多数いた。

 それでも「健康なら、田中とピネダの2人はどこにも引けを取らない先発1、2番手だ」と補強封印を早々に宣言して撤退。逆に大型補強に動いたブ軍の猛追で、一時は地区首位を奪われていただけに、信じて待った田中の完投は何よりもうれしかった。

 昨季は20年ぶりに2年連続でポストシーズン進出を逃すという屈辱を味わった。今季は09年以来6年ぶり28度目のワールドチャンピオンを狙える位置にいる。なった暁には、世界一GMはどんな挑戦を見せてくれるのだろう。空は制したから、次は海底か、地の長距離走か、はたまた宇宙か。(後藤 茂樹)

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2015年8月19日のニュース