3戦432球 秋田商・成田翔 涙の敗退「抑えたかった」

[ 2015年8月18日 05:30 ]

<秋田商・仙台育英>敗れ涙を流す秋田商・成田翔

第97回全国高校野球選手権第12日・準々決勝 秋田商3―6仙台育英

(8月17日 甲子園)
 2年ぶり出場で80年ぶり8強進出を決めた秋田商は、準々決勝で仙台育英(宮城)に3―6で敗れて同校初の4強入りはならなかった。先発した成田翔(かける)投手(3年)は強力打線相手に奮闘したが、2度の登板で9安打6失点と踏ん張れず、涙を流した。打線は9回に工藤慶捕手(3年)の適時二塁打などで2点を返す粘りを見せたが、あと一歩及ばなかった。

 諦めなかった。9回2死からつなぎに、つないだ。ベンチで声をからすエース成田翔の目は真っ赤になっていた。バッテリーを組む工藤の打球は左翼線へ。1人還り、送球ミスもあって2人目も還ってきた。一塁側アルプス席ではベンチ入りできなかった控え選手たちも泣きながら絶叫していた。そして会田主将の弾丸ライナーは無情にも仙台育英・佐藤世のグラブに収まった。「ワオォー」。球場から湧き起こる地響きのような音の後、秋田商の健闘を称える大きな拍手が起こった。

 苦しい試合は承知の上だった。前日は高崎健康福祉大高崎相手に延長10回、161球完投した成田翔が連投。「肘に疲れはあります。でもそれは理由にしません。初回から腕を振ってチームを勢いづかそうと思って投げた」。3回まで完全投球。仙台育英の強力打線に真っ向勝負を挑んだ。4回2死では「要注意」と警戒していた平沢相手に1―1からの直球を右翼席まで運ばれた。「力負けです」と、奪われた先制点。5回は4安打を集中されて3失点。6回にも1点を追加され、マウンドを斉藤に譲って右翼へ走った。

 「世那(佐藤)より早くマウンドは降りたくない。降りたら負けということですから」。試合前にそう誓っていたが、連投の疲れがのしかかった。しかし右翼でも見せ場はつくった。7回1死三塁。平沢の右飛を捕球するや本塁へストライク返球。タッチアップを狙った三塁走者を刺して、諦めない姿勢を示した。そして8回からは再びマウンドへ。直球を軸に2回を投げ切った。「とにかくチームのために抑えたかった」とエースの役目を果たした。

 甲子園3試合で432球を投げきった。同校を80年ぶりのベスト8へと導いて「秋田商の野球はできたと思う」と話した。次は上のレベルへ。「石川さん(ヤクルト)を超える投手になりたい」と先輩超えを目標に定めた。その石川と現役時代はバッテリーを組んでいた太田直監督は「素材は素晴らしいんです。でもまだまだ。これから覚えることもたくさんあります」と愛弟子にあえて厳しい注文を出した。

 1メートル68の小柄な左腕。翔と書いてカケル。二重のきれいな瞳を持つ少年が100年の甲子園に大きな足跡を残した。

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