日本ハム・田中 好プレー生み出す「常識外れ」なグラブの使い方

[ 2015年7月13日 10:30 ]

グラブから指2本を出す田中

 記者になる前は銀行員だった。主に中小企業に対する融資を担当し、営業活動に汗を流した。そんな事実を知って、ある選手が声を掛けてきた。「きょうから、おまえは金融担当だよ」。大リーグから3年ぶりに復帰した日本ハムの田中だ。「野球ばっかりやっていると、いろいろと分からなくなるから教えて」。練習中のグラウンドで「ギリシャ情勢が金融市場に与える影響」について逆質問を受けた時は正直、戸惑った。その好奇心と向上心には驚かされることが多い。

 初めて取材した沖縄・名護での先乗り合同自主トレでもそうだった。全体練習後。「(グラブの)面が横を向かないようにすることが狙い」と捕球面が平らな特製グラブで、球団スタッフが転がすゴロをひたすらさばいていた。さらに、キャンプが始まると人さし指と中指を出してグラブをはめるようになった。目を疑う光景だったが「一度、試してみるとハンドリングが良かったんだ」。通常、人さし指だけを出すことはあるが、セオリーは無視。自らの感覚を優先した。開幕後もこの「常識外れ」なグラブの使い方を継続し、二塁手として数々の好プレーを生み出している。

 良いと思ったものは取り入れる。顕著なのは打撃練習かもしれない。試合前のティー打撃、フリー打撃では、腰を逆回転させて打つ「ツイスト打法」を徹底。この打ち方は投げてくるボールに対して、体が開かないようにする練習法として巨人・阿部が取り入れていることで知られる。練習では一度もフルスイングすることがない。田中が入団した00年から指導する白井内野守備走塁コーチ兼作戦担当は「何かを矯正するためには、極端な動きが必要になる」と狙いを説明する。

 7月12日の時点で30三振は、規定打席に達しているチームの打者で最も少ない。最後まで体の近くに投球を引きつけ、ボール球には手を出さない。練習の成果を実践で発揮している。現在、「(右腕を)引くと痛い」と右肩に不安を抱えるが、右肘を折り曲げて体に密着させながら走る「変則走法」で患部への負担を極力減らすなど、満身創痍(そうい)の中で工夫を凝らしている。

 「僕は(練習が)独特なんで、なかなか理解されにくいと思う。見ていて“何やっているんだろう”と思われるかもしれない。僕なりに考えてやっていて、自分のペースでやらせてもらう立場。ありがたいし、調整しやすい」。中島、西川ら20代前半の若手が多いチームにとってこれ以上ない見本となっている34歳。実りの秋へ、ますます頼れる存在になっていくはずだ。(柳原 直之)

続きを表示

2015年7月13日のニュース