渡辺横浜 最後の夏圧勝発進「選手が主役」采配ズバリ7回コールド

[ 2015年7月13日 05:30 ]

<横浜・光明学園相模原>ベンチから指示を出す横浜・渡辺監督(右)と次期監督の平田部長

第97回全国高校野球選手権神奈川大会1回戦 横浜9―0光明相模原

(7月12日 保土ケ谷)
 第97回全国高校野球選手権大会(8月6日から15日間、甲子園)の地方大会は12日、44大会で今夏最多の447試合(不戦勝1試合を含む)が行われた。神奈川大会では今夏限りで勇退する渡辺元智監督(70)率いる横浜が、光明学園相模原を9―0の7回コールドで下し、初戦を突破。13日は35大会で311試合が行われる。

 30人以上の報道陣に囲まれた横浜・渡辺監督は試合後、椅子に腰を下ろし、笑みを浮かべた。「とりあえず良かった。私が主役じゃない。選手が主役。勝たせたい気持ちだけだった」。ノーシードで登場した最後の夏の幕開けは、14安打9点の快勝だった。

 全国制覇5度、春夏甲子園通算勝利歴代3位タイの51勝を誇る指揮官が、今夏限りの勇退を決めて臨んだ初戦。かつての教え子や次女・元美さん(44)が見守る中、試合前ノックでは外野まで鋭い打球を飛ばした。序盤は選手にも硬さが目立ったが、試合を動かしたのも名将のタクトだ。

 1点リードの5回。先頭の山田が右前打で出塁すると、続く藤平に1ボールからバスターエンドランを指示した。「(隣にいた)平田(徹部長)が“あいつは送りバントが下手ですよ。バスターはうまいです”と言うからサインを出した。珍しいこと」と次期監督の助言を取り入れた。その藤平は中前打で無死一、三塁と好機を広げ、2番・戸堀の中前適時打で追加点。6回には4番・公家と7番・山田の2本の本塁打で3点、7回にも4点を挙げた。「雰囲気を味わわせることが大事」と先を見据え、投手陣は4人を継投させる一方で、5回に併殺打に倒れた主将・相川を直後に交代させる厳しさも見せた。

 盟友の小倉清一郎コーチが昨夏に退いた。長年の疲労がたまった腰は痛むが、渡辺監督は自ら打撃投手やティー打撃のトスを上げるなどしてチームを鍛えてきた。「小倉が去り、体はきついが、昔に戻って厳しくやっている。その思いが乗り移って、選手が自らやろうとしてくれた」と名将は目を細めた。

 6度目の全国頂点へ。70歳・渡辺監督の最後の夏が始まった。 (松井 いつき)

 ◆渡辺 元智(わたなべ・もとのり)1944年(昭19)11月3日、神奈川県生まれの70歳。横浜では中堅手。神奈川大に進学したが、右肩の故障で野球を断念。65年に横浜のコーチに就任し68年から監督を務める。73年センバツで初優勝するなど5度の全国制覇。98年には松坂(現ソフトバンク)を擁し甲子園春夏連覇、明治神宮大会、国体の4冠を達成した。甲子園では歴代3位タイの通算51勝。

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