異文化交流の中心にマー君 明るさをもたらす存在は…

[ 2015年7月11日 09:40 ]

プロレスごっこ!?ノバとじゃれあう田中

 とにかく騒がしい。名門ヤンキースのクラブハウス。田中にちょっかいを出すのは、たいてい陽気なドミニカンだ。代表格は6月24日のフィリーズ戦で右肘のじん帯再建手術(通称トミー・ジョン手術)から復帰登板した右腕ノバである。

 田中の顔を見ると、絡まずにはいられない。スマートフォンに保存した愛息がダンスを踊る動画を見せびらかしに来るのはまだ、かわいい。意味もなく田中をこづいたり、メディアに囲まれている外側から笑わせようと変顔をしてみたり…。時間も場所も選ばない。

 あきれて苦笑いで済ますことが多かった田中。だが、キャンプ中に強烈な日本語を浴びせた。「チャントヤレ!」。半分は冗談だが、半分は本気。ほどなく意味を理解したノバも今度は田中に「チャントヤレ!」と応酬。1メートル93のノバと1メートル88の田中が、少年のようにじゃれ合っている。コワモテながら実は物静かなサバシアや、ノバと対照的にシャイなドミニカンのピネダ。先発陣はノバが復帰し、明るくなった。フォームに苦しむなど1カ月、白星から遠ざかった田中にとっては、明るさをもたらす存在だったかも知れない。

 もう1人。ノバ以上に陽気なドミニカンがいる。現在はマイナー落ちしているが、6月まで貴重なロングリリーフをこなしたロジャーズだ。昨年8月、ブルージェイズから移籍してきた右腕。春のキャンプから全開だった。突然、田中に向かって「ガンバッテ、ガンバッテ、シゴト、ガンバッテ!」と大声を発したかと思えば、日の丸のはちまきを巻いてロッカーをウロウロしたり。聞けばブ軍時代に親しかった川崎に日本語を仕込まれ「オレは日本が好き。福岡に行ってみたい」と話す。一番のお気に入りフレーズ「イーヨ、イーヨ、マツモトイーヨ!」で得意顔だ。キャンプ、シーズンともにロッカーは田中の1つ空けて右隣だった。ノバとコンビを組んで田中とじゃれる光景はさながらトリオ漫才。この時ばかりは田中も素の笑顔を浮かべる。数少ない息抜きの時間だ。

 メジャー2年目で英語のヒアリングが格段にアップした田中。「チャントヤレ!」の代わりと言わんばかりに、ドミニカン2人からは無理矢理?スペイン語を覚えさせられる。溶け合わず共存するという意味で、近年は「人種のサラダボール」と呼ばれる米国。エースの期待をかけられる名門のクラブハウスで、田中が異文化交流の中心にもなっている。(春川 英樹)

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2015年7月11日のニュース