キヨシDeNA 逆転サヨナラ!史上初の全球団借金“演出”

[ 2015年7月4日 05:30 ]

<D・神>9回1死二塁、石川(手前)がサヨナラ二塁打を放ち、劇的勝利にガッツポーズの中畑監督らDeNAベンチ

セ・リーグ DeNA4-3阪神

(7月3日 横浜)
 セ・リーグは3日、勝率5割だった首位・ヤクルトと2位・阪神がそろって敗れたために、プロ野球史上初めてリーグの全6チームが負け越した。演出したのが、阪神に逆転サヨナラ勝ちしたDeNA。1―3の9回に代打・後藤武敏内野手(35)の3号2ランで追いつき、石川雄洋内野手(28)が自身初のサヨナラ打となる右中間適時二塁打で決めた。首位・ヤクルトから5位・広島まで0・5ゲーム差にひしめく史上まれに見る大混戦となった。

 あまりの興奮に言葉が出てこない。「いやー、来たね。ウチの勢いがよみがえったゲームができた。凄い。ナイスゲーム。いいです」。中畑監督は10秒足らずでまくし立てると、一度、監督室に引っ込んだ。そして数分後。「何かあればどうぞ」と満面の笑みで報道陣の前に再び姿を現した。

 セ・リーグの混戦の度合いをさらに深めたのは、2点のリードを許し、敗色濃厚の9回だった。マウンドには阪神の守護神・呉昇桓。先頭のバルディリスが中前打で出塁すると、指揮官は迷うことなく代打・後藤を送った。カットボールを捉えた打球は激しい降雨を切り裂き、右中間席に飛び込んだ。「このところ本当に打てていなくて、打席に行くのも苦しい感じだった。やっと輝けました」。実に5月5日のヤクルト戦(横浜)以来、代打では20打席ぶりの安打が起死回生の同点2ランとなった。こうなると、もうイケイケだ。1死二塁から最後は石川が右中間にプロ11年目で自身初となるサヨナラ打。「初体験は気持ちいい。打てそうな気がしてた」と会心の笑みで振り返った。

 中畑監督は「素晴らしい逆転劇。単なる1勝じゃない」と話したが、セ・リーグ全体にとっても“単なる1勝”ではなかった。リーグ6球団がすべて借金を背負うという史上初の珍現象を生み出し、実に1~5位まで0・5ゲーム差の中にひしめく未曽有の大混戦だ。

 そもそも「0強6弱」ともいえるペナントレースを生み出したのは、DeNAの交流戦での大失速だった。3勝14敗1分けで交流戦史上最低勝率(・176)を記録し、リーグ戦再開をまたいで12連敗。中畑監督は「首位なんて“20年早い”って神の声だったんだよ」と評した上で、セ界の借金地獄には「凄いじゃん。借金は持たないといけないんじゃない?苦労は買ってでもしろ、って言うだろ。裕福な姿を見せたら、人間ろくなことがない。ウチなんて借金には慣れてるよ、エヘヘ」と豪快に笑い飛ばした。

 この日の午後2時すぎには指揮官は天気予報から雨天中止を確信し、「中止ってなんでウキウキするんだろうね。シーズンの終わりは長くなるし、何の得もないのに…」と野球人の性(さが)をのぞかせていたが、お天道様に感謝しなければならない。そして、DeNAはこれからもセ界の台風の目であり続ける。(東山 貴実)

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