プロ野球の「レンタル移籍制度」 本格的に検討する価値あり

[ 2015年7月1日 10:30 ]

プロ野球の「レンタル移籍」検討する価値も

 数日前、美容院へ行った。スポーツ好きの美容師さんから素朴な疑問が飛んできた。「なんで野球にはレンタル移籍の制度がないんですか?サッカーだと当たり前なのにね」。私も同様の意見をずっと持っていた。

 3年前までサッカー担当だった。プロ野球担当になり、サッカーに比べて人材の流動性が低いと感じていた。サッカーには「完全移籍」と「期限付き移籍」という2つの制度がある。後者は、所属クラブで出場機会に恵まれていない選手が3カ月や6カ月といった期間限定で他クラブに「レンタル」される仕組み。サッカーファンの間では馴染みのある制度だ。

 野球で選手が移籍するにはトレードかフリーエージェント(FA)を利用するしかなく、いずれも「完全移籍」だ。チームによって戦力に偏りはある。例えばロッテは、外野手の選手層は12球団No.1と言われる。一方で投手陣は先発・中継ぎともに手薄だ。補強費が潤沢で補強に積極的な球団なら助っ人を連れて来ればいいのだが、すべての球団がそうではない。「いる選手でやるしかない」というのが伊東監督の口癖でもある。投手陣の不調が原因で4位と5位を行き来しているとあって、あるチーム関係者は「1カ月だけでもいいからよそから投手を借りたいよ…」と漏らす。

 「レンタル移籍制度」についてプロ野球選手会でも議論になったことはあるという。所属チームでは2軍暮らしでも、他球団なら1軍で活躍できる可能性のある選手は少なくない。人材の流動性を高めれば選手は実戦経験を積むことができる。その選手が成長して戻ってくれば球団にとってもプラスになり、きっとファンも納得するのではないか。韓国球界で指導経験があるロッテ・落合1軍投手コーチは「日本に比べて韓国の方が人材の流動性が高い」と言う。

 もちろん、クリアすべき問題はある。野球は各チームごとに細かいサインがある。選手が移籍することで戦術を含む情報が筒抜けになるというリスクもあるが「同一リーグ間は禁止」などといったルールが整備されればどうか。

 7月31日に外国人選手の補強やトレードによる移籍の期限を迎える。この1カ月で新たな動きがある可能性もあり、記者は気が抜けない日々を送る。移籍の垣根が低くなれば取材も今以上に大変になりそうだが…。それでも、球界全体として本格的に検討する価値はあると思う。

 ◆重光 晋太郎(しげみつ・しんたろう)1980年(昭55)3月3日、大阪府生まれの35歳。法大卒。04年スポニチ入社。文化社会部、福島支局、高校野球担当、サッカー担当を経て、12年10月からプロ野球・ロッテ担当。

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