なぜ阪神は首位に立てたのか?打率、防御率…軒並みリーグ最下位も

[ 2015年6月26日 08:05 ]

投打でチームを引っ張る福原(左)と福留

 いかにして猛虎は首位に立ったのか。打率、防御率、得点、失点、本塁打、盗塁…。チーム成績が軒並みリーグ最低ながら、混戦のセ・リーグで首位へ浮上。一見振るわない各データを掘り下げた時に浮かび上がる“勝因”とは?首位固めへの道筋も見えた!?

 表面的な数字だけをみれば、とても首位に立てる成績ではない。得失点差はマイナス72点。消化した試合数「68」よりも多い。単純計算すれば、1試合戦えば確実に相手よりも1点負けていることになる。交流戦の始まった05年以降で見ても、セ・リーグで得失点差が試合数以上のマイナスで終わったチームはすべて最下位に沈んでいる。本来なら大低迷していても不思議ではない。

 ところが、いまの阪神はセ・リーグで唯一、貯金を保ち、首位にいる。「他のチームが弱いから…」。そんなマイナス思考を今回の分析では排除してみた。「弱い」とされる他5球団よりも阪神の成績はほとんどの部門で劣っているからだ。

 得点と失点の大きな落差は辛勝と大敗の多さの表れだ。失点数別の勝敗を見ると、4失点以下では31勝9敗、5失点以上では3勝24敗1分け。どのチームでも5失点以上の戦績がいいはずはない。ただ、今季の阪神は極端で、まさに「5点の壁」が立ちふさがっている。攻撃側から見れば「5点以上の打ち合いでは敵わない」という弱み、守備側から見れば「4失点以内ならほとんど勝つ」という強みを示していた。

 ロースコアの競り合いを制する最大の功労者は福原だろう。今季は28試合に登板しているが、優勢時に限った19試合で一度も形勢逆転を許していない。優勢時の得点圏被打率は・000。呉昇桓(オ・スンファン)の救援失敗も3度だけで、他球団の抑え投手に比べれば安定感は高い。7回終了時にリードした展開からの逆転負けもわずか1度。最下位の広島は同条件下で借金と同数の敗戦を喫しており、対照的に映る。

 逆に他の救援陣には不安定な投球も目立つ。劣勢時では余計に弱いから大敗も増える。他の救援陣を挟むことなく、先発→福原→呉昇桓とつないだ時は、5勝1敗と高い確率で勝利を拾ってきた。これがロースコアでの高勝率の要因だろう。

 攻撃陣はどうか。福留の勝負強さは劣勢時に際立つ。9本塁打の中で先制、同点、勝ち越し、逆転の肩書が付く殊勲弾は6本を数える。勝利打点7はチーム最多。特に延長戦では5打数3安打5打点と好成績を残している。劣勢や同点局面からの打点が多く、逆に優勢から点差を広げるような追い打ちは少ない。苦況を救う打撃が印象度を高めている。

 投の福原、打の福留。2人のベテランの奮闘によってロースコア試合で白星を積み重ねてきた。この事実から首位固めの課題も見えた。38歳の福原と福留を、シーズン最終盤までいかに万全でグラウンドに送り出せるか―。体力的な負担が格段に増す夏場も近い。昨季は42ホールドポイントで最優秀中継ぎ投手賞に輝いた福原だが、9月は11試合で防御率8・64と崩れていた。

 大敗が多いと言っても意図的に“捨て試合”を作ってきたわけではない。和田監督は「ビハインドで投げる投手が振るわない」と不満を持つ。大量点差を付けられた試合で、福留やゴメスを“休養”させる起用もまだ少ない。特に福留に関しては開幕当初は実践していた週1回は先発を外れるペースを保てていない。開幕当初の6番と違い、6月16日からは3番に座り24打数10安打の打率・417。機能していることで余計に休養させづらくなった。

 福原や福留の負担を軽減させるような中堅、若手は出てくるのか。懸命なやりくりでシーズン半分近くを戦ってきた和田監督の手腕にも期待が高まる。

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