ゴメス“奪首と思った弾” 土壇場の8回、一時逆転の完璧3ラン

[ 2015年6月24日 05:30 ]

<広・神>8回1死一、三塁、3ランを放ったゴメスは今成と歓喜のポーズ

セ・リーグ 阪神6―6広島

(6月23日 長野)
 雨上がりの長野の夜空に虹のように美しいアーチが描かれた。1点を勝ち越された直後の8回、ゴメスが大仕事を果たした。まさに4番の仕事だった。

 リリーフ転向4戦目の大瀬良を打ち砕いた。先頭打者の鳥谷がフルカウントから選んだ四球で開いた突破口。柴田が投犠打を決めて役割を果たせば、福留が右前打で好機拡大。1死一、三塁からの初球をフルスイングで完璧にとらえた。

 決して簡単ではない内角球。狙っていたのだろう。146キロの速球を一切の迷いなく強振で打ち抜いた。推定飛距離は130メートル。上がった瞬間に誰もが確信した本塁打は左翼席へ消え、一振りで試合を逆転させた。

 「ストライクゾーンにきた球を積極的にいこうと思っていた。自分のやれることをしっかりできた」

 初回の1死一、三塁では遊ゴロ併殺打。先頭打者で迎えた4、6回は三ゴロと一邪飛の凡退。黒田の巧みな投球に翻弄(ほんろう)され、仕事をさせてもらえなかった。黒田が降りた8回は捕手も石原から会沢へ交代。不発を重ねた3打席でため込んだ鬱憤(うっぷん)を勝負どころの1打席に詰めて吐きだした。

 打率そのものは・259。マートンの不振の陰に隠れていても打点王を獲得した昨季のような安定感を欠いてきた。21日のヤクルト戦では守備や走塁でミスも犯し、心機一転を期して臨んだ一戦だ。たとえ、4分の1の確率でも勝敗を決する一打を放つのが4番の役割だろう。

 開幕から67試合目。セ・リーグでただ一人、ゴメスは全試合に渡って誰にも譲らず先発4番を務めてきた。不調の時期もあり、守備で精彩を欠くことがあっても打線の中心を外れない理由は、この一発にあった。歴史的大混戦となりつつある今季のセ界を戦っていく上で“不動の4番”の存在は間違いなく猛虎の強みだ。

 8回、9回に1点ずつ返されてしまったことで決勝打とはならなかったが大きな存在感を示した。雨による34分間の中断を除いても、5時間13分に及んだ激闘の末、引き分けに終わったが「毎試合できることをやるだけ。それがいい結果につながる」と疲れを見せずに毅然と話し、球場を後にした。

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