格安360万円助っ人ヤク・デニング 借り物バットでV満弾!

[ 2015年6月8日 05:30 ]

<ヤ・ロ>7回1死、勝ち越しの満塁弾を放ち笑顔で三塁ベースを回るデニング。左は今江

交流戦 ヤクルト8-4ロッテ

(6月7日 神宮)
 一瞬、動きが止まった。頭が真っ白になったからだ。大歓声で我に返ったデニングは笑顔で走りだした。本拠地初の一発となる決勝の2号満塁弾を右翼席のヤクルトファンに届けた。

 「打った瞬間、入るとは思った。でも、何が起きたか分からなくて、どうリアクションしていいのか分からなかった」

 快音を響かせる直前は冷静に状況を把握していた。1点を追う7回に山田が同点弾を放ち、なお1死二、三塁で前を打つ畠山が敬遠気味の四球。「もう相手は四球を与えられない。初球か2球目にストライクを取りにくる」。1ボールから2球目、高めフォークを仕留めた。

 バレンティンらの故障離脱もあり、ルートインBCリーグ新潟から5月下旬に緊急加入。新潟ではシーズン中の約半年だけ出る月給30万円が生活の糧で、長岡市内の家賃4万円の部屋に住み、近所の飲食店で味わう500円のチキン南蛮定食がごちそうだった。ヤクルト入りで年俸はほぼ倍増の360万円(プラス出来高)に。球団寮は衣食住全てで快適だ。真面目な性格で若手に交じって早出練習もこなす男の満塁弾に、真中監督も「いいところで打ってくれたね」と目を細めた。

 新潟時代のバットはアマチュアのロゴ入りのため使用できず、現在は森岡から借りている状態。数本を使い分け、7回は通常の930グラムより10グラム重いバットを選択して満塁弾につなげた。「今後も1打席ごとに対応したい」とデニング。「格安」の男が「救世主」となった。

 ≪独立リーグ出身セ初≫デニング(ヤ)が初の満塁弾。ヤクルト新外国人の満塁本塁打は12年5月31日の日本ハム戦でミレッジが打って以来3年ぶりだ。また、デニングの前所属はBC・新潟。国内独立リーグ出身者の満塁本塁打は、10年カラバイヨ(オ=BC・群馬)、13、15年角中(ロ=四国・高知)に次ぎ3人目、4本目だが、セではデニングが初となった。ヤクルトの交流戦通算満塁本塁打は9本目で、ロッテ(13本)に次ぐ2チーム目の2桁に王手。

 ◆ミッチ・デニング 1988年8月17日生まれ、オーストラリア出身の26歳。レッドソックス傘下マイナーや米独立リーグなどでのプレーを経て、13年5月にBCリーグ・新潟入り。同年に打率.370で首位打者となった。オーストラリア代表として09、13年のWBCに出場。1メートル87、91キロ。右投げ左打ち。

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