江夏氏 大敗虎に「やり返せ」KO岩田へ「エースの自覚を」

[ 2015年5月20日 08:50 ]

<神・巨>試合前に映し出された江夏対王の映像

セ・リーグ 阪神0―8巨人

(5月19日 甲子園)
 伝説の男は泣いていた。球団創設80周年企画・レジェンズデー第2弾として開催された19日の阪神―巨人戦(甲子園)。宿敵に大敗した一戦を目の当たりにした阪神OBの江夏豊氏(67)は「やり返せ」と呼びかけた。今春キャンプでは臨時投手コーチを務めた縁もあり、4回1/3で6失点降板した岩田には「エースの自覚をもて」と叱咤(しった)激励。猛虎の伝統を受け継ぐ後輩たちには、レジェンドの魂の叫びに応える責務がある。

 宿敵の巨人にぶざまに敗れた一戦を、江夏氏は甲子園球場記者席で目の当たりにした。春季キャンプで指導した後輩であり、教え子が下を向く姿をどう思ったのか?内心は「こんな試合しやがって」や「情けない」かもしれないが、発した言葉は「やり返せ」だった。

 「オレは現役時代、負けたら“次は絶対に打ち取ってやるからな、見とけよ”と思ったものだ。借りは倍にして返さないといけないんだよ」

 通算206勝193セーブを記録した球史に残る大投手は、一方で158敗を喫した。巨人戦に限れば9度の完封勝利を含む通算35勝の喜びだけではない。通算40敗の悔しさも糧として野球人生を歩んだ。

 今年2月1日から8日までの間、1軍キャンプに参加した全17投手と会話した。ミーティングでは伝説となった『江夏の21球』を例に出し、無死満塁の大ピンチを背負っても「決して開き直るのはダメ」と説いた。

 3回。同じ満塁があった。2死満塁から岩田が井端に浴びた左翼線二塁打で致命的な追加点を奪われた。「あれは、打った井端くんがうまかった」。そう解説しても5回途中で6失点KOされた岩田を物足りなく思った。岩田だけではない。先発陣の中核を担う面々に高い志を求めた。

 「オレはエースの自覚をものすごく持っていたんだよ。でも岩田くんはエースじゃない、まだ主力投手の一人なんだ。能見くんも藤浪くんもメッセンジャーも、まだ主力投手レベル。この4人から“オレがエースになるんだ”というものを見せてほしい」

 1歳年上の上田次朗が22勝をマークした1973年、江夏氏はそれを上回る24勝を上げた。「チームに2人の20勝投手が出たが、エースは絶対に譲らなかった」。キャンプから本当に伝えたかったのは、この部分だったのかもしれない。

 球団創設80周年記念企画・レジェンズデー第2弾。試合前にはセレモニーがあり、バックスクリーンには江夏氏が1968年9月17日にシーズン最多奪三振の記録更新となる354個目を王貞治氏から奪った映像も流れた。こだわって狙って王氏から奪い取った三振だった。

 やり返せ―。大敗の夜にレジェンドは叫んだ。20日にも伝統の一戦があり、雪辱の機会が来る。もちろん、岩田にも。猛虎の意地と誇りをぶつける姿を伝説の男は願っていた。

 ≪もうG戦3度目零敗≫阪神は今季5度の零敗のうち3度が巨人戦。シーズン3度の巨人戦零敗は12年の4度以来3年ぶり。これで球団創設80周年記念の「レジェンズデー」は1勝3敗。3月8日のオープン戦「永久欠番デー」など、OB選手が関係したものを含めると、80周年記念試合は1勝6敗と苦しんでいる。

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