藤浪、1失点完投で46日ぶり勝った!「正直、苦しかったです」

[ 2015年5月15日 08:45 ]

<ヤ・神>8回2死一塁、畠山を三振に仕留めて跳び跳ねる藤浪

セ・リーグ 阪神4―1ヤクルト

(5月14日 神宮)
 長いトンネルを脱出した!阪神・藤浪晋太郎投手(21)が14日のヤクルト戦(神宮)で8安打1失点完投し、2勝目を挙げた。実に3月29日の中日戦(京セラドーム)以来7試合、46日ぶりの白星を、自己最多となるシーズン3度目の完投で彩った。チームも連勝で最下位を脱出し、4位タイへ浮上。この快投を号砲に、いざ反攻態勢や!

 藤浪は、ゴメスから誇らしげにウイニングボールを受け取った。敵地のヒーローインタビュー。その第一声は「正直、苦しかったです」。もがき苦しんだ45日間に思いをはせ、胸中を吐露した。

 「勝てない中、悪い投球ばかりでなく、いい投球をしても自分に勝ちが付かなかったり、負けたり…。そういう意味で苦しかったです」

 悔しさをぶつけた。最速155キロを計測した直球で丁寧に内外角を突くとともにカットボール、フォークなどを効果的に織り交ぜ、的を絞らせない。テンポも抜群。2回に畠山にソロを被弾しても、動じない。余裕さえあった。5回、先頭・成瀬の打席ではフォーム修正も敢行。「捕手の後ろに突き抜けていくイメージを持ったら、いいリリースにつながった」。球威の増した直球で、追いすがる燕をねじ伏せた。

 「序盤、少し力んだ部分もあったが、5回以降はいいバランスで余計な力を抜いて投げられた」

 わずか113球の完投ショー。これこそ3年目の藤浪だ。オーバースロー転向、直球の縦回転、脱力投法―。“変身”のきっかけは合同自主トレをともにした前田健(広島)の言葉だ。「“抜けるよりも引っかけた方がいい”という考え方は自分の中で斬新な発想。自分は嫌っていた部分もありました。でも、マエケンさんの話を聞いて、思い切って上から叩こうという気持ちが生まれた。いまのフォームや縦回転気味にやっているのも、そういう発想があってというのはある」。超一流のイズムも吸収し、3年目仕様の投球を作り上げた。

 オフだった10日は母の日。藤浪の母・明美さん(50)の携帯電話が鳴った。「夜どこにも出る用事ない?」。母の在宅を確かめた愛息はカーネーションの鉢植えを持って堺市内の実家へ。「私がベランダで花を育てているのを知っていますからね」と言う明美さんに感謝の気持ちを示すとともに、夜は自宅で一家だんらんの夕食を囲んだ。勝てない日々が続く中、最高の気分転換となった。

 心機一転、装いも新たにした。今月初登板からグラブをゼット社が開発した新モデルに変えた。網に“とげ”が生えた、GIZA―BENDタイプ。担当者が「グラブを閉じようとする力が指の先端まで伝わり、ギザギザカットは恐竜の背をイメージして力強さも伝わります」と言うイメージ通りの投球も展開した。

 敵地連敗を7、自身連敗を4で止めた。神宮球場初勝利で、同一リーグの全本拠地球場を制覇。「2回3回と続けていいピッチングをしたい」。藤浪の本領は、これからだ。

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