原監督「彼に教わった」G打線に欠けていた野性味もたらした堂上

[ 2015年5月13日 06:00 ]

<巨・広>7回1死一塁、堂上は左中間に適時二塁打を放つ

セ・リーグ 巨人2-1広島

(5月12日 東京D)
 戦力外、故障を乗り越えた背番号91が大仕事だ!巨人は12日、今季から加入した堂上剛裕外野手(29)の活躍で逆転勝ちし、広島の連勝を6で止めた。この日出場選手登録され、「6番・左翼」で今季初出場。2回に移籍初安打を放つと、0―1の7回には広島・前田健太投手(27)から同点の左中間適時二塁打、さらに暴投で決勝のホームを踏んだ。チームは20勝に到達し、首位・DeNAとのゲーム差を2とした。

 勝利のハイタッチ。堂上は謙虚な性格そのままに、一人一人に頭を下げながらナインの祝福を受けた。どん底からはい上がった29歳が、新天地での初出場、初スタメンでヒーローとなった。

 「感謝の気持ちでいっぱいです。獲っていただいたので、絶対に恩を返すんだ、という気持ちでいい結果になった」

 0―1の7回1死一塁。広島の絶対エース・前田健に対し「追い込まれたので、食らい付いていった」とファウルで粘り、最後は外角145キロを左中間へ。同点適時二塁打に東京ドームが大歓声に包まれた。さらに2死一、三塁から前田健のワンバウンドの投球を捕手の会沢がはじくと、三塁から猛然と突っ込み、決勝のホームへ滑り込んだ。

 最後に対戦した一昨年は4打数2安打。「得意なイメージはないが、自分の状態がよかった」。2回の第1打席でも中前へ移籍初安打。観戦に訪れた長嶋茂雄終身名誉監督も「堂上はよかったね。2本目は左中間にうまく打った」と称賛した。

 背番号は91。今季の巨人のテーマの一つ「野性味」を感じさせる男だ。キャンプ中の実戦9試合で打率・355、1本塁打、10打点とアピールし支配下に昇格。2月28日、ヤクルトとのオープン戦(東京ドーム)では、初回の守備で右手親指の付け根を痛めながら「離脱するわけにはいかない」とプレーを続け、2度も打席に立った。のちに骨折と判明し、原監督を驚かせた。この日も指揮官は「野球というスポーツは本当に気持ち、魂を奮い立たせる。そういうものを彼に教わった」と称え、「ジャイアンツの選手たちにもいい刺激になったと思います」と続けた。

 2軍では右手が使えない時期は、左手一本でティー打撃を繰り返した。さらに「自分の足りないところを補った。調子の波があるので、継続してやれるように」と打撃の確実性を追求。心に刻んだのは内田2軍打撃コーチの「自分を知れ」という言葉だ。右肩が内側に入る悪癖をオープンスタンス気味に構えることで修正。どん底を自らのステップに変えられるところに、強さがある。

 試合中は、4万4132人の大歓声を「獲ってくれなかったら、なかった歓声だな」と感慨深げに聞いた。お立ち台ではキャンプ中に食事をともにするなど、チームに溶け込むサポートをしてくれた井端も一緒。「こうしてここに立てて、少し恩返しができた。これからも頑張っていきたい」。故障で離脱していた阿部と坂本は13日から復帰するが、堂上の野性味はチームには欠かせない。

 ≪実はマエケンキラー≫中日から移籍した堂上(巨)が初出場で同点打を含む2安打。巨人デビュー戦で殊勲安打込みのマルチ安打は、外国人選手を除けば、08年7月2日ヤクルト戦で鶴岡(現阪神)が先制打を含む2安打して以来7年ぶりだ。また、前田健(広)とは中日時代から11試合目の対戦。通算成績は21打数7安打の打率・333、3打点と難敵を攻略している。

 ◆堂上 剛裕(どのうえ・たけひろ)1985年(昭60)5月27日、愛知県生まれの29歳。愛工大名電では4番を務め、2年春、3年春夏と3度甲子園出場。高校通算46本塁打。03年ドラフト6巡目で中日入団。昨オフに戦力外となり、巨人と育成契約。今年2月23日の春季キャンプ中に支配下選手登録された。父・照氏は元中日投手で、弟・直倫は中日内野手。1メートル83、85キロ。右投げ左打ち。

続きを表示

この記事のフォト

2015年5月13日のニュース