あと1球から阪神劇場…同点押し出しの関本「必死や必死」

[ 2015年5月7日 08:32 ]

<神・中>9回2死満塁、押し出しの四球を選び、ガッツポーズの関本

セ・リーグ 阪神3-2中日

(5月6日 甲子園)
 神様と呼ばれる男は冷静だった。1点を追う9回2死満塁。阪神の代打・関本がフルカウントからの内角直球を自信を持って見極めると、控えめに左の拳を握った。

 「必死や、必死。気持ちだけ」

 シンプルなコメントが勝負師らしい。プロ19年目が顔で奪った同点押し出し四球だった。打席を振り返ってみる。土壇場で登場した切り札は中日3番手の又吉にボール、ファウル、空振りと3球で追い込まれた。だが、ここから粘りを見せる。4球目、ボール気味の外角スライダーに思わずバットが出かかった。捕手の谷繁が一塁審判にスイングをアピールしたきわどい判定はセーフ。気合で平行カウントに戻すと、5球目は同じ外のスライダーを平然と見送った。そして6球目、根負けした又吉の直球が内角に抜けて、試合が振り出しに戻った。

 実は直前で福谷から代わった2年目の変則右腕・又吉には昨年、3度対戦して3三振と全くタイミングが合っていなかった。だが、何度も修羅場をくぐり抜けてきた男は、こんなデータにも動じない。

 「(投手が代わっても)全然、大丈夫。どっちみち抑えの投手やから」

 自分のやるべきことに集中し、冷静に状況を判断して結果を出した。開幕2戦目の中日戦(京セラドーム)での延長10回、サヨナラの押し出し死球に続き、バットを振らずに貴重な打点を挙げた。

 虎が誇る代打の神様も今季は打率・077(13打数1安打)、3打点と、ここまでは満足いく数字を残せていない。それでも、和田監督は勝負所で何の迷いもなく名前を告げる。それは数字だけでは表せない貢献があるからだ。この日も指揮官はヒーローの新井とともに「良太がよく打ってくれたし、前でセキ(関本)も持ち味を出して、よく選んでくれた」と称えた。

 ゴールデンウイーク最終日。お立ち台こそ新井に譲ったが、虎党に最高の思い出を贈ったのはベテランの必死の粘りだった。

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