同僚&ファンお祭り騒ぎで涙声1号…イチロー「特別な時間は人がつくってくれる」

[ 2015年5月1日 05:30 ]

<マーリンズ・メッツ>8回1死一、三塁、1号3ランのイチロー(右)は笑顔で生還(AP)

ナ・リーグ マーリンズ7―3メッツ

(4月29日 マイアミ)
 泣けた――。マーリンズのイチロー外野手(41)が29日(日本時間30日)、メッツ戦で1点リードの8回に勝利を決定付ける1号3ランを放った。日米通算23年連続の本塁打で、22試合目でのシーズン1号は、昨季の102試合目より大幅に早い。チームメートにもみくちゃにされ、地元ファンからはカーテンコールで祝福された。新天地で感激の体験が続いている41歳は言葉を詰まらせる場面もあった。

 高々と右翼ポール際に打球が舞い、イチローはスタンドインを確信した。本拠マーリンズ・パークの熱狂も最高潮に達した。4―3の8回1死一、三塁で飛び出した1号3ラン。クールに一周した41歳を想定外の祝福が待っていた。

 ベンチはお祭り騒ぎ。一回り以上も年下のチームメートたちが自分のことのように喜び、抱きついてきた。さらにスタンドからは「イチロー」コールが鳴りやまない。マイク・レドモンド監督に促された背番号51は、ベンチ前で帽子を掲げた。試合後、両目はうっすら赤く充血していた。

 「打った後、チームメートも、ファンも、あんなに喜んでくれたら、泣きそうやね」

 涙声。こらえて「僕が結果を残すことに…」と続けると、言葉に詰まった。一呼吸入れた。「そりゃ僕もうれしいけど、それより(周りの温かみが)何倍もうれしいね。特別な時間は自分でつくるのではなく、人がつくってくれるのだとつくづく思う」。初アーチの喜びよりも、感謝の思いがずっと上だった。

 25日に王貞治氏のプロ野球記録を上回る日米通算1968得点を踏み、翌日にはそのホームプレートを贈られ、同僚と記念写真に納まった。「得点(記録)の時もそうだし、周りがいろいろしてくれて」。現在打率両リーグトップ・409で、師匠と慕ってくるゴードンにはしきりに右上腕をさすられ、いじられた。「尊敬されてるのか、ナメられてるのか。でもあの全体写真を見ても、あんなにみんながうれしそうなんて見たことない。そのことに心を動かされている」。平均年齢27歳の若いチームから「センセイ」と慕われ、開幕前には「みんな可愛くてしようがない感じ」と父心さえのぞかせていた。ところがどうだろう。イチロー自身が力をもらい、躍動し始めている。

 本塁打は、左腕A・トーレスの内角高め93マイル(約150キロ)を捉えた。頭が微動だにしない軸回転。かつて代名詞とした振り子打法とは違う。「あれと似ている」と言うのはマリナーズ時代の09年9月18日。ヤンキースの守護神リベラから逆転サヨナラ2ランを放った。右肩を開かずに振り抜くことで切れずに伸びた。高い技術は健在だ。

 首位メッツ相手に連勝し、2勝1敗でカードを勝ち越した。イチローがスタメンに定着した21日からチームは7勝2敗。「楽しくさせてくれるのは周りの人間なので。こんなこと、初めての経験ですねえ…」。湧き上がる体のほてりは、南国マイアミの太陽と南風のせいだけではない。

 ≪日米23年連続本塁打≫イチローはオリックス2年目の93年から日米23年連続本塁打。日本で23年以上の連続本塁打は4人だけで、最長は谷繁(中日)の26年連続。次が野村(西武)の25年連続で、張本(ロッテ)、門田(ダイエー)の23年連続に並んだ。メジャーでは01年の1年目から15年連続本塁打。今季の日本選手では初本塁打。

続きを表示

この記事のフォト

2015年5月1日のニュース