10安打浴びても7回0封!岩田 今季5度目で執念星「必ず報われる」

[ 2015年4月30日 05:30 ]

<神・ヤ>今季初勝利を挙げた岩田(右)はマートンに祝福されおどけた表情でガッツポーズ

セ・リーグ 阪神3-1ヤクルト

(4月29日 甲子園)
 今季5度目の登板となった阪神・岩田稔投手(31)が、29日のヤクルト戦(甲子園)で毎回の10安打を許しながら7回無失点の力投で昨年8月20日以来、252日ぶりの勝利を手にした。チームも開幕カードの中日3連戦以来となる3連勝で9カードぶり勝ち越し。世間同様、ゴールデンウイークに突入した猛虎が一気に借金完済を狙う。

 何度も崖っぷちに追い込まれながら、踏みとどまった。勝ちたい-。岩田の白星への執念が粘りの投球を生んだ。

 「3者凡退が1イニングもなくて、すごく悔しい。情けない投球だった」

 猛省の言葉が象徴するように「苦投」だった。7回まで毎回の10安打を浴び得点圏に走者を背負うこと6度。7回も2死から連打で一、二塁とされたが、4番雄平をフォークで空振り三振に仕留めた。「後ろでしっかり守ってくれる方がいるので安心していた」とバックの好守を信じ、そして救われた。

 開幕前に大阪市内の病院を訪ねた。個人トレーナー・稲川翼氏の実弟で競輪トップ選手の稲川翔が3月上旬のレースで落車し左鎖骨を骨折。昨年は互いに試合観戦するなど親交も深い。「競輪選手は鎖骨骨折は筋肉痛と同じぐらいよくあること、と言っていた(笑い)。悔しいはずやけど、ケガにも負けない姿はすごいと思う」。見舞いに訪れたつもりが、逆に勇気をもらった。

 昨年10月も同箇所を骨折しながら約2カ月で完治させ、年末のKEIRINグランプリに間に合わせた姿も見てきた。「競技は違うけど、刺激になるよな。自分も翔に負けてられないし、頑張らんと、と思うから」。今季初登板となった3月28日中日戦に招待し8回無失点の快投で“激励”していたが、この日、ようやく白星を届けることができた。

 ここまでは好投しながらも勝利の女神には微笑まれず。それでも「必ず報われる」と心が折れることはなかった。6回まで完全投球をしながら勝てなかった21日DeNA戦後、自宅に帰ると長男、長女、愛犬を連れて近くの河川敷に散歩に出かけた。帰り際、日が落ち始めると、夕日を見つめる愛息らの後ろ姿を携帯カメラで撮影した。「俺のセンスや」と自画自賛する1枚は大切に保存。「家族のためにしっかり投げないとあかん」と胸に刻む3児の父にとって、勝てない辛さを忘れる、家族とのひとときだった。

 79年前の1936年4月29日は第1回日本職業野球リーグ戦でタイガースが藤村富美男氏の完封で初勝利をマークした日。記念の日に生え抜き左腕が、球団創設80周年を迎えた猛虎の、価値ある勝利をアシストした。

 「次は内容の良い投球をしたい。1つ勝てたので良い方向になっていくと思う」

 長いトンネルを抜け、光は見えた。背番号21が大きな1勝を手にした。

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2015年4月30日のニュース