大砲として開花しつつある福田 恩師評価する打「教えてもマネできない」

[ 2015年4月19日 08:00 ]

既に4本塁打を放っている中日・福田

 オープン戦で4本塁打を放ち、開幕後も4本塁打と、プロ9年目にしてホームランアーチストとしての才能が花開きそうな福田永将内野手(中日)。18日の広島戦(マツダ)ではプロ初の4番に座り、黒田博樹投手から先制の適時三塁打も放った。アマチュア野球もくまなくカバーする野球ライターの菊地選手が、横浜高時代の恩師・小倉清一郎さんに進化の裏側を聞いた。

 早熟なのか、晩成なのか。今年の福田永将を見ていると、よくわからなくなってくる。

 27歳になる今年、ブレークの兆しを見せる福田だが、小・中学生時代からスーパースターだった。特に緑中央シニア(現横浜青葉シニア)では3年春の関東大会で1試合3本塁打を放つなど大暴れ。多くの関係者がその才能を称賛し、勧誘に訪れた高校は50校ほど。名門・横浜高では故障や好不調の波はあったものの、通算49本塁打をマーク。高校生ドラフト3巡目で中日に入団すると、プロ1年目から当時の落合博満監督(現GM)から打撃力を高く評価された。3年目には一軍に昇格し、プロ初打席初本塁打という華々しいデビューも飾っている。

 しかし、そこからが長かった。プロ8年間で放った安打は23本、本塁打も4本にとどまった。

 高校時代は部長として福田の技術面を指導した小倉清一郎さん。数多くの名選手を輩出してきた名伯楽だが、今の福田の活躍についてはさほど驚くそぶりを見せなかった。

 「バッティングは誰が見ても買うでしょう。ただ、今までは守るところがなかった。キャッチャーとして入って、サードに回されて、またキャッチャーに戻って、やっぱりファーストに回って…。ファーストでは外国人がいるから、かわいそうだったよね。本当はキャッチャーができればよかったけど、プロでは落ちる系のボールを捕るのに苦労していたから、厳しかったんじゃないかな」

 福田の打撃の特徴は、その大きなフォロースルーだろう。まさに「雄大」と形容するにふさわしい、強さとしなやかさを兼ね備えたスイングだ。たとえ試合で打っても打たなくても、「福田のフォロースルーを見るために球場に行きたい」と思わせるに十分な魅力がある。小倉さんは福田のスイングについてこう解説する。

「スイングワークが大きい。それでいて鋭さもあるから、『大振り』というわけではない。これは教えてもマネできないものだろうね。筒香(嘉智・DeNA)はパンチショットという感じでインパクトの強さがあるけど、福田は大きなフォロースルーで放物線を描くタイプ」

 ようやく日の目を見たスラッガー。しかし、主軸のルナ、期待の若手・高橋周平らとのからみもあり、起用法は代打とスタメンとを行ったり来たりしている。右手親指を骨折して離脱している森野将彦が復帰すれば、さらに状況は厳しくなるだろう。福田の野球人生をかけた勝負は、まさに今なのだ。

 そして、才能は間違いなくあるのに、残念ながらチャンスがなくファームで眠っている…、そんな選手はまだまだたくさんいるに違いない。

 ◆菊地選手(きくちせんしゅ) 1982年生まれ、東京都出身。野球専門誌『野球太郎』編集部員を経て、フリーの編集兼ライターに。プレーヤー視点からの取材をモットーとする。著書に『野球部あるある』シリーズがある。

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