元キャプテンが指導者で帰ってきた「自分の経験を伝えていきたい」

[ 2015年4月9日 05:30 ]

ナインにあいさつする荒木副部長

復興へのプレーボール~陸前高田市・高田高校野球部の1年

 始業式前に行われた新任式。野球部に新たな指導者が加わった。09年に主将を務めた荒木拓也副部長(23)は「立派な社会人になれるように、そういう面をしっかり指導していきたい」と決意を口にした。

 09年7月21日。岩手大会準々決勝で菊池雄星(現西武)擁する花巻東と対戦して3―5で敗れた。「やれるだけのことはやったという思いが強かった」と振り返る。試合前夜に39度の高熱が出て、盛岡市内の病院で点滴を打った。当日は意識がもうろうとする中、「3番・二塁」で出場し2安打。「雄星君のスライダーを流し打ってレフト前。今でもはっきり覚えています」と懐かしむ。

 福島大1年時に起こった大震災。親の無事を確認すると陸前高田に戻ってボランティアに参加した。「高校のクラスメートも津波の被害に遭って…」。沿岸部で遺体捜索を志願した。

 捜索中には、がれきの中に思い出の品を発見した。88年夏の甲子園出場を記念してつくられた、作詞家の阿久悠さん(故人)の詩が刻まれた石碑だ。「たまたま先輩と見つけたんです」。無傷で残った石碑は仮校舎で保管され、今後は新校舎横にある室内練習場付近に移される予定だ。

 一般就職を経て、4月からは海洋システム科の実習助手になった。「まだ指導者というのはピンと来ないですけど、自分の経験を伝えたりしていきたい」。しっかり者だったかつての主将が、母校に帰ってきた。

続きを表示

この記事のフォト

2015年4月9日のニュース