太ももに目が釘付け 高木勇 万年候補から6度目ではい上がったワケ

[ 2015年4月5日 16:38 ]

<巨・神>プロ初完封の高木勇は勝利の瞬間ガッツポーズ

 巨人のドラフト3位ルーキー・高木勇人投手(25=三菱重工名古屋)が初登板のDeNA戦(3月29日、東京ドーム)に続き、5日の阪神戦(東京ドーム)ではプロ初完封勝利を飾った。開幕ローテ入りを果たし2戦2勝のオールドルーキーだが、プロ入りまでの道のりは、一筋縄ではなかった。

 無名な頃から見続けている野球ライターの菊地選手が高木勇の歩みを振り返った。

 東京ドームのマウンドに立った右腕の「太もも」に目が釘付けになった。

 2009年8月23日、都市対抗野球大会・ヤマハ対富士重工戦。8回裏からヤマハのマウンドを任された筋肉質な右腕は、そのぶ厚い太ももでどっしりと立ち、豪快な腕の振りから放たれるストレートでぐいぐい押した。

 パンフレットの名前を見ると、「高木勇人」。三菱重工名古屋からの補強選手だった。まだ高卒2年目の20歳とあり、来年はドラフト候補に挙がってきそうな予感があった。

 事実、高木勇は2010年の「ドラフト候補」に挙がった。ところが、それから毎年、高木勇は「ドラフト候補」と呼ばれ続ける。ドラフト会議で高木勇の名前を呼ぶ球団がなかったからだ。三重・海星高時代も含めて、2014年秋までに5度も指名漏れを経験したことになる。

 最速153キロの本格派右腕として、潜在能力は誰もが認めていた。しかし大事な場面で痛打を浴びる高木勇は、ドラフト指名を受ける「決定打」を欠いていた。

 2014年の秋、高木勇の名前はまたもドラフト戦線に浮上する。東海地区在住のライター・尾関雄一朗さんは、高木勇について「大きくは変わっていない」と前置きした上で、その変化について語った。

「『行き先は球に聞いてくれ!』という荒々しいタイプだったのが、年々いい意味でまとまってきた印象です。今までアバウトだった勝負どころでのスライダーも決まるようになりました。大事な試合でも勝てるようになりましたし、スカウトも安心して推薦できるようになったのではないでしょうか」

 一方で、対戦経験のある社会人選手からは「完成度が高いピッチャー。でも、プロではまとまりすぎてどうなのかな?」という声も聞かれた。運命の2014年ドラフト当日、高木勇は巨人からドラフト3位指名を受け、ようやくプロへの重い扉をこじ開けた。

 25歳のオールドルーキーは、開幕3戦目の先発投手に抜擢される。結果は6回2失点の好投で、プロ初登板初勝利。試合後のヒーローインタビューでは、思わず声を詰まらせた。再三のピンチで粘りに粘ってホームに還さない投球は、まさに社会人野球での7年間で磨き上げたものだった。

 「6度目の正直」…と書くと、もはや正直者ではなく、嘘つきではないかと思えてしまう。しかし、「6度目の挑戦」を経てはい上がってきた苦労人が東京ドームのマウンドに立つと、相変わらず厚い太ももが、プロで生き抜くための太い幹のように見えてくる。

 ◆菊地選手(きくちせんしゅ) 1982年生まれ、東京都出身。野球専門誌『野球太郎』編集部員を経て、フリーの編集兼ライターに。プレーヤー視点からの取材をモットーとする。著書に『野球部あるある』シリーズがある。

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