黒田「広島のマウンドは最高」2740日ぶり日本で白星

[ 2015年3月30日 05:33 ]

<広・ヤ>7回2死一塁、中村を三振に斬り、雄叫びを上げてベンチに戻る黒田

セ・リーグ 広島2-1ヤクルト

(3月29日 マツダ)
 まさに男気劇場だ!ヤンキースから8年ぶりに復帰した広島の黒田博樹投手(40)が29日、ヤクルト戦に先発し、7回を96球で5安打無失点。毎回のように走者を背負いながらも得点を許さず、日本では2740日ぶりの白星を手にした。3万1540人の大観衆の中、数々の修羅場をくぐり抜けてきた男は、重圧をものともしなかった。メジャーの20億円前後のオファーを蹴って、日本球界に帰ってきた黒田の戦いが幕を開けた。

 スタンドを真っ赤に染めたファンは総立ちで黒田の登場を待った。8年ぶりの復帰登板で白星。一塁ベンチで緒方監督と抱き合い、お立ち台へと向かった右腕を万雷の拍手が包み込んだ。ヒーローは笑顔だった。

 「たくさんの声援をもらい、いい結果が出てホッとしています。広島のマウンドは最高でした。気持ちが入ったし、凄く大きな1勝です」

 試合前から異様な雰囲気に包まれていた。「バランスが悪く、序盤から力が入り過ぎた」と毎回のように走者を背負った。それでも、最速149キロの直球と多彩な変化球を内外角に投げ分け、連打を許さない。見せ場は1―0の7回。2死一塁で中村に対し、フルカウントからの7球目、143キロのツーシームが外角ボールゾーンからシュート回転してストライクゾーンへ吸い込まれた。見逃し三振。ガッツポーズで雄叫びを上げた。

 「展開的にも苦しい場面で、目いっぱいに投げた1球。それがいい結果になって良かったです」

 7回を5安打無失点で降板。9回のピンチはベンチ裏で「仲間を信じていた」と、モニターで勝利の瞬間を見届けた。

 日本中から喝采を浴びた決断。ファンはもろ手を挙げて喜ぶが、黒田自身はまだ責任を果たしたとは思っていない。「結果がすべて。1年間フルで投げ続けられたら…」。それが7年間待ち続けてくれたファンへの恩返し。秘めたる誓いを96球の力投に込めた。緒方監督は「どれだけのプレッシャーを背負って投げていたか。その中で最高の結果を出してくれた。簡単な言葉では称えられない」と称賛した。

 マツダスタジアムには、人気デュオ「B’z」が黒田のために書き下ろした「RED」が初めて鳴り響いた。アップテンポで重厚なロック調。♪ここで全て出し切ると あらためて誓おう 沈黙を破るのは言葉じゃない――。まさに歌詞通りの投球だった。

 8年前に在籍した時はマツダスタジアムではなく、広島市民球場。メジャー移籍前最後の勝利となった07年9月27日のヤクルト戦(広島)の観衆は7639人だった。「帰ってきて良かったか、1試合では判断できないけど、今まで球場が真っ赤になっている中で投げる経験がなかった。凄くうれしかった」と言葉に実感を込めた。

 「体が続く限り、チームのために投げようと思います」。最終章に入った黒田の男気伝説は、日米通算183勝目という形で一ページ目がスタートした。

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