由規 魂の38球 東北に勇気届ける快投「中途半端…できない」

[ 2015年3月12日 05:30 ]

<オ・ヤ>先発し3イニングを無失点に抑えた由規

オープン戦 ヤクルト2―2オリックス

(3月11日 京セラD)
 午後2時46分。ヤクルト・由規はマウンドにいた。3回、T―岡田にこの日唯一の安打を許し、無死二塁のピンチを迎えていた。ここで駿太を二ゴロ。伏見からは内角直球で空振り三振を奪い、最後は平野恵を遊直に仕留めた。予定の3回を1安打無失点。思いの詰まった38球だった。

 「中途半端な投球はできないと思っていた。いい形で終えられたので、被災された方、東北の方に少しでも届いていればいいなと思います」

 東日本大震災で甚大な被害を受けた仙台市出身。仙台育英時代にバッテリーを組んだ1学年上の斎藤泉さん(享年22)を亡くした。故郷への思い。高津投手コーチから11日か12日の登板を打診され、迷わず「特別な日」を選んだ。12年のこの日も広島とのオープン戦(福山)に先発したが、打球を受け負傷降板。「最後まで無事に投げられるかな」という重圧を乗り越え力投した。毎回の4奪三振。最速は150キロをマークした。

 1軍登板は11年9月3日を最後に遠ざかる。右肩手術からの復活を目指し、リハビリを続けてきたが「震災から4年たちますが、僕もケガをして3年半。プレーで勇気づけることができなかった」と複雑な思いも持っていた。支援活動なども消極的になった。しかし3年ぶりに1軍キャンプに同行し、実戦マウンドにも立った今季。「プレーしている姿を見せられたらいいし、復活してそういう(支援)活動もできたら」と思い描いた。

 首脳陣は手術歴のある右肩を考慮し、12日から2軍で調整させることを決めた。先発投手として100球の球数ノルマをクリアするため。真中監督は「開幕は厳しいが、早い段階で1軍で投げてくれれば。内容は非常にいい」と話した。復活への階段を一歩ずつ上がる由規。特別な日の特別なマウンドから、強い思いを故郷に届けた。 

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