東北に届け 雄平、決勝打!第2の故郷へ…「野球で元気を」

[ 2015年3月11日 05:30 ]

<侍ジャパン・欧州代表>8回無死一、三塁雄平は適時打を打つ

GLOBAL BASEBALL MATCH 2015 侍ジャパン4―3欧州代表 

(3月10日 東京D)
 侍ジャパンは10日、欧州代表との強化試合の第1戦を行い、終盤の逆転劇で辛くも勝利した。1―3の8回に同点に追いつき、侍デビュー戦となった雄平外野手(30)が中前に決勝打。中堅守備で再三の拙守があったが、汚名返上の一打を放った。投手から野手に転向して6年目。今季はヤクルトで4番を任される侍ジャパンの新戦力が活躍し、格下の欧州代表を相手に世界ランキング1位の意地を見せた。 

 フルスイングだけを考えた。2点を追う8回、筒香、松田の連続適時打で追いつき、なおも無死一、三塁。雄平は3ボール1ストライクから中前に勝ち越し打を放った。「僕のミスで3失点した。絶対打ってやろうと思った」。中堅守備で3失点に絡んだ。2回先頭サムスの中前打に反応が遅れ、二塁進塁を許した。このプレーが先制点につながり、国際試合の怖さを知った。4回にもアングロの大飛球に追いつきながら、グラブからボールをこぼした。

 昨季、セ・リーグ最多の316刺殺と広い守備範囲を誇る雄平だから追いつけたが「捕ってやらないと投手に申し訳ない」と平身低頭。その分、バットで取り返した。4回2死から持ち味のフルスイングで右翼線二塁打を放ち、山田の二塁打で反撃のホームを踏んだ。「へこたれてはいけない。自分のベストを尽くす」と切り替え、2安打1打点と結果を出した。

 試合前、小久保監督のチームへの指示は「追い込まれる前に打て」だった。投手の球種や癖、審判の傾向が把握できない国際試合では、打者優位のカウントで自分の打撃に持ち込む必要がある。雄平は指示を忠実に守り、2安打した2打席とも積極的に振りにいった。

 11日で東日本大震災発生から4年がたつ。雄平は神奈川県出身だが、東北高の3年間を宮城県で過ごし「少しでも野球で元気を与えられれば」と言う。高校時代、151キロ左腕として騒がれ、打っても高校通算37本塁打を放った。身長1メートル74と決して大きくはないが、背筋力は300キロを誇り、「東北の超高校球児」と言われた。

 投手として通算18勝を挙げた。しかし2軍暮らしの日々が続き、10年に野手に転向した。震災時も2軍生活だったが、同年のセンバツに母校が出場した際、スポーツ飲料を差し入れ、後輩を励ます雄平の姿があった。
 転向5年目の昨季、打率・316、23本塁打とブレーク。今回、アマチュア時代も含めて初めて日の丸を背負った。30歳は野手では松田に次いで2番目の高齢だ。前日の練習から「メッチャうれしい」と連呼し、この日も試合前に自身のユニホーム姿を携帯電話のカメラで撮りまくった。

 無邪気で純粋な男は言った。「全力プレーを見てもらって元気になってくれればいい」。お世話になった被災地に、フルスイングで勇気を届ける。

続きを表示

この記事のフォト

2015年3月11日のニュース