岩本ローテ確定!魂の巨人斬り “別人”55キロ差緩急で5年目の快投

[ 2015年3月9日 08:00 ]

<神・巨>藤村富美男氏の背番号10を背負って力投する岩本

オープン戦 阪神0-1巨人

(3月8日 甲子園)
 阪神は8日、球団創設80周年記念の一環として、甲子園での巨人とのオープン戦を「永久欠番デー」として開催した。5年目の岩本輝投手(22)が花を添える快投。6回を4安打無失点に抑え、開幕ローテーション入りを引き寄せた。藤村富美男、村山実、吉田義男。偉大な3氏が燃やした「打倒巨人」の魂を、右腕がマウンドで目いっぱい表現した。

 ナイン全員が故藤村氏の永久欠番「10」を付けた伝統の一戦。初代ミスター・タイガースが阪神球団創設と同時に背負ったこの番号がグラウンドに復活したのは、1959年3月の引退試合以来56年ぶりだった。メモリアルゲームに躍動したのは岩本。巨人を相手に6回零封、4安打無四球、5奪三振と文句なしだ。

 「真っすぐがよかった。去年よりもスピード上がって、勝負できるようになってきた」

 初回、2死無走者で迎えた坂本には、この日最速の146キロの真っすぐで追い込み、続けてストレートを選択。142キロの真っすぐをズバっと外角低めに決めて見逃し三振させた。2回先頭のセペダも内角をえぐるストレートで見逃し三振だ。3日のソフトバンク戦で出した自己最速の150キロには及ばなかったが、昨年まで最速145キロだった男が、常時140キロ台の半ばを投げられるようになっている。

 そうかと思えば、打ち気をそらす90キロ台のスローカーブも随所に披露。最大55キロの球速差でG打線を幻惑した。また、試行段階のツーシームも要所で決まった。

 この好投に、予定の5回を終えても「6回(表の攻撃中)に言われて」と、首脳陣からもう1イニングの“プレゼント”。このサプライズに「抑えればチャンス」と捉える強気なメンタルを発揮し、見事に3人で片付けた。

 これで対外試合5試合で17回2/3を投げ、防御率は圧巻の1・02。先発枠を、ほぼ手中にしたと言っていい。「きょうぐらいの投球を今後も続ければ、そこに近付いていくんじゃないかな」と和田監督。中西投手コーチも投球内容について「十分!」と言い切った。

 温かく見守る人がいる。山口県防府市の自宅でテレビ観戦した岩本の母・早苗さん(50)は「手に汗握る試合で、緊張と震えと涙が止まりませんでした。巨人に投げているのが信じられない」と感激。バックネット裏では南陽工時代の山崎康浩監督の夫人、淳代さん(47)が「すごくうれしい。山口から主人の代わりに来てよかった」と喜んだ。

 偉大な先輩の背番号を付けたことを問われても「自分のことで精いっぱい」と平謝りするしかなかった右腕。それでいい。新たな「猛虎」の芽生えには、観戦した吉田氏だけではなく、天国の村山さんと藤村さんも、大満足だったに違いない。

 ◆藤村富美男(ふじむら・ふみお)1916年(大5)8月14日、広島県呉市出身。呉港中(現呉港)で32~35年に甲子園に6度出場し34年夏優勝。36年の阪神創設時に投手で入団。野手転向後は4番打者として活躍し、49年に本塁打、打点王でMVP。50年に打率・362で首位打者など数々のタイトルを獲得。通算成績は1558試合で1694安打、224本塁打、1126打点の打率・300。選手兼任監督も務め「(初代)ミスタータイガース」と呼ばれた。58年現役引退。74年野球殿堂入り。92年没(享年75歳)。

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