「ようしッ、最高!」ミスター 最後の愛弟子・阿部に密着指導

[ 2015年2月15日 05:30 ]

ゲージの中に入り阿部(右)に指導する長嶋終身名誉監督

 ミスターが、チョ~異例の熱血指導だ。巨人・長嶋茂雄終身名誉監督(78)が14日、宮崎キャンプを視察し、阿部慎之助内野手(35)をマンツーマンで指導した。打撃ケージの前でアドバイスを送ってフリー打撃を中断させてしまうなど、熱く燃えた35分間。今季、捕手から一塁へコンバートされ、打棒復活を目指す主砲に「ミスターの魂」を注ぎ込んだ。長嶋氏は、15日も紅白戦を視察する。

 燃えた。動いた。熱くなった。こんなミスターは見たことない。今キャンプ最多の2万9000人が見守る中、長嶋氏は阿部に身ぶり手ぶりでアドバイスを送った。

 それは、阿部のフリー打撃開始に合わせてブルペンから移動してきた午後0時半だった。ティー打撃を見て声を掛け、場所を変えてロングティーが始まると、もう止まらない。「もっと(下半身を)絞ってッ」「そうそう」「OK、OK」「ようしッ、最高!」。正面から、前方から、後方から。阿部の周りをぐるぐる回りながら、左膝の使い方を示し、左手でスイングの軌道を描く。

 その10分間の指導が終わり、阿部の打撃の順番が来ると、ミスターは驚くべき行動に出た。打撃ケージに入った阿部を追うようにしてケージの前に立ちはだかり、腰を落として左手の拳を突き出したのだ。「ここだ、ここ!」。拳でボールのコースを示し、そこに合わせて阿部がスイングする。その間、隣のケージで村田はフリー打撃を中断。球場全体の視線が阿部の素振りに注がれる異様な光景だった。

 素振りも含めたフリー打撃を10分間、打ち終わると再びロングティーを10分間。一度は「ありがとうございました」と言った後も5分の追加指導があり、計35分間の「ミスター熱血劇場」となった。指導のポイントは下半身。「中盤から後半にかけて、いい打球が出てきました。下半身は大事な要素。下半身を重点にして上半身、腕を使うように言った」。左膝を絞り込むように下半身から始動し、軸をぶらさずに回転で打つ。昨季、打率・248、19本塁打に終わり、復活を目指す阿部は「自分が取り組んでいることと同じだったのでとてもありがたかった。教わったことを取り込みながらやって(期待に)応えたい」と感謝した。

 長嶋氏がグラウンドで個人をここまで直接指導するのは監督時代にもない。でも、やらずにはいられなかった。今季、捕手から一塁へ転向した阿部。主軸のコンバートはチームへ多大な影響を及ぼすからだ。自身も第1期政権の76年「壁際の魔術師」と呼ばれた名手・高田繁(現DeNAGM)を左翼から三塁へコンバート。視察前から「今回は阿部を見たい」と言っていたほどで「常に安定した4番がいい打撃をすることによって、チームにも影響をもたらすから」と続けた。

 長嶋監督ラストイヤーの01年、正捕手に抜てきしたのがルーキーだった阿部。いわば最後の愛弟子にミスター魂を注ぎ込んだ35分間だった。

 ▼巨人・原監督 阿部は有意義な一日になっている。原点に戻って振りがシンプルになっている。(ブルペンの投手陣は)目の色を変えていた。腕の振りが強く感じた。長嶋さんの存在は大きいよ。

 ▽高田繁の左翼→三塁転向 長嶋監督の就任1年目、最下位に沈んだ75年のシーズン後。日本ハムから張本勲(現本紙評論家)を獲得したため、左翼手の高田が三塁コンバートを命じられた。外野から内野への転向は異例だが、猛練習の末に成功させて76年にダイヤモンドグラブ賞(現ゴールデングラブ賞)を受賞。打率も自己最高の・305をマークし、リーグ優勝に貢献した。

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