巨人ブランド再創造へ 久保球団社長が打ち出した「戦略」は…

[ 2015年1月27日 10:00 ]

パートナーシップ契約締結発表会での(左から)久保球団社長、原監督、株式会社ドーム・安田社長

 昨季セ・リーグ3連覇を遂げた巨人は、実数発表以降では球団初となる2年連続300万人の観客動員を達成した。読売新聞社時代に箱根駅伝やワールド・ベースボール・クラシック(WBC)など国内外のビッグイベントを手掛け、昨年6月に球団社長に就任した久保博氏(65)はスポニチ本紙の単独インタビューに応じ、営業・興行面でさらなる高みを目指す方針を示した。久保社長の「成長戦略」と「国際戦略」に迫る。

 ――昨年6月、球団社長に就任。生活の変化は。

 「前は十種競技の選手みたいでした。野球が終わったら箱根駅伝だとか東京マラソンだとか。その他に美術なども。前は強制的な忙しさ。今は自分のペースで仕事ができるのが、一番変わったことです。シーズンを通して選手のコンディションを維持することがいかに大変かを実感する一方で、試合と満員の観客がつくり上げる独特の球場空間、プロ野球の面白さ、素晴らしさを再認識しましたね」

 ――以前の巨人関連の仕事は。

 「01年6月に(読売)新聞社の事業局のスポーツ事業部長のポストに就いてから13シーズン、チケットを売ったり放送交渉をし、マーチャンダイジング(物販)をやったり、試合運営もずっとやって、いわゆる興行を担当してきました」

 ――昨年は実数発表が始まった05年以降、ホーム観客動員が球団最多の301万8284人。

 「実数発表は(事業局時代に)率先してやりました。興行上の慣行として5万5000人という数字をずっと発表していても、自分たちもチェックできないじゃないですか。減ったら減ったということを明確にしないと。それも世の中に示して、ちゃんと責任をハッキリさせるということですね」

 ――2年連続で300万人超えの意味は。

 「もうこれ以上は入れるのはなかなか難しいですね、東京ドームは。後はカロリーを高くする。つまり年間予約席の契約数を増やしていくことです。幸い、年間予約席はこの3年間、前年比でプラスになっている。入場者数は同じでも増収になっています」

 ――グッズ販売では複数球団とのコラボも視野に入れている。

 「東京ドームは興行収入面ではもうMAXに近い。今後はマーチャンダイジング分野とかで市場の拡大が見込めます。それも複数球団、セ・リーグで組んだり、さらに12球団で市場を拡大する時代ですね。リーグビジネスの方が力があるというのはMLBを見れば明らか。つまり、ファンが選択ができるということ。ジャイアンツショップじゃなくて、セ・リーグショップ、12球団ショップがあるとか」

 ――国際戦略も強化していく方針と聞く。

 「アジア市場を視野に入れたいというのは私の考え方です。李スンヨプ選手がいた頃、韓国に放送権を日テレと売りに行って、3年間契約をしました。ジャイアンツブランドというのは韓国でも大きいし、台湾でも圧倒的人気があります。王さんは今でもスーパースターですから」

 ――昨年、球団創設80周年記念事業としてロサンゼルスで巨人―阪神の開幕戦を行う計画を水面下で進めていた。

 「実はお金の設計も含めて準備はほぼ終わっていました。が、コミッショナーの辞任問題などがあって、球団創設80周年記念事業として取り組むことが難しくなったんです」

 ――開催は近い将来の目標になるか。

 「チャレンジはしたいと思っています。準備は出来上がっているので。あとはタイミングですね。昨年は80周年というタイミングがあった。アメリカも西海岸のチームは(オープン戦で)日本のチームと試合をやりたいという意欲はありますから。特にドジャースなんかはもの凄く太平洋戦略に熱心です」

 ――その本気度とは。

 「去年3月、オーストラリアでのドジャースとダイヤモンドバックスとの開幕戦を見に行きましたけど、シドニーで最も古いクリケット場を、数千万円をかけて改装したと聞きました。4試合だけのために。ダッグアウトも掘って。アメリカから土を300トン運んだそうです、船で」

 ――スケールの違いを感じたと。

 「アメリカと対決したってしようがないと思います。MLBの力も借りて日本のプロ野球市場をどうやって大きくするかとか、ジャイアンツのビジネスをどういうふうに大きく展開できるか。むしろ利用したいと思っています。MLB、NFLにはスポーツビジネス面で学ぶことは、まだまだたくさんあります」

 ――現在アジアを含めた国際戦略のステップを踏んでいるのか。

 「今は構想の段階。(球団の)外にいた時に考えていたことはあるんだけど、やっぱり中に入ってもう一度再構築しないといけない。具体的なところまでは、いっていないですね」

 ――今年は球団社長として初のフルシーズンを迎える。マニフェストは。
 「球団は100周年に向けた“ジャイアンツブランド再創造”のスタートの年だと思っています」

 ◆久保 博(くぼ・ひろし)1949年(昭24)9月7日、宮城県生まれの65歳。東北大文学部を卒業し、75年4月に読売新聞社入社。経済部、地方部などを経て、01年にスポーツ事業部長に就任。09年から事業局長となり、14年6月に巨人軍の代表取締役社長に就任した。

続きを表示

この記事のフォト

2015年1月27日のニュース