控え扱いだった2014年…イチロー 野球少年に贈る言葉は「我慢」

[ 2014年12月24日 06:20 ]

閉会式でメダル授与中、子どものかけていたメガネを借りてかけてみるイチロー。しかし度数が合わず目を押さえる

 ヤンキースからFAとなったイチロー外野手(41)が23日、故郷の愛知県豊山町で行われた「第19回イチロー杯争奪学童軟式野球大会」の閉会式に出席した。来季の所属球団が決まらないまま同大会に出席したのは今回が初めて。恒例のあいさつでは、外野の控えとして出場機会に恵まれなかった今季を振り返り、「我慢」の大切さを子供たちに説いた。

 現在の自身の立場を象徴する第一声だった。司会者から「ヤンキースのイチロー選手です」と紹介されると、イチローは苦笑いしながら「厳密に言うと、ヤンキースではないんですけど、こんにちは」とあいさつした。今オフにヤ軍からFAになり、来季の所属球団が決まっていないためだ。

 メジャー14年目の今季は、5番手の控え外野手としてスタート。一時は右翼の定位置を奪ったが、143試合出場、102安打はいずれもメジャー移籍後自己最少だった。熱心に耳を傾ける子供たちに「今年の僕がみんなに何を伝えられるかというと、我慢ということではないかと思いました。大人になると我慢の連続。自分の気持ちを抑えて未来へ向かっていく。これしか方法がないと言ってもいい」と力説。「今年の自分のシーズンを振り返った時も真っ先にそのことが頭に思い浮かびました」と続けた。出場機会が限られた中でも準備は決して怠らない。「そこ(準備)は大事にしたいし、それをしない僕は僕ではない」。イチローらしい言葉だった。

 世界各国から選手が集まる大リーグ。「アメリカやラテン系の選手はとにかく主張が強い。でも、試合になるとできないことの方が多い」と自身の体験談を披露した。その上で「自分の思いを秘めてやる方が日本人らしくて僕は格好いいと思う」と闘志を内に秘めながらプレーする美徳を説いた。「例えばヒットを打つ、ホームランを打つ、三振する。その時に喜びや悔しさを表現するというのは誰でも出てくる。それを相手への敬意も含めて我慢する。自分の思いを内に秘めて立派な大人になってほしい。それが僕のメッセージ」。約6分間、優しいまなざしで語りかけた。

 メジャー通算3000安打には残り156本。日米通算では、ピート・ローズの持つメジャー最多4256安打に残り134本に迫っている。ジョン・ボッグス氏を新代理人に迎え、来季の移籍先を探している。条件の一つにレギュラーとして評価してくれる球団を挙げているが、41歳の左打者に思い通りのオファーが届くかは不透明だ。初の越年も視野に入る中、11月に放送された米テレビ番組内で「来季も大リーグでプレーする」と強い決意を示したレジェンド。子供たちに送った「我慢」の2文字は、自らへのキーワードでもあった。

 ≪イチロー杯での金言≫

 ☆過程(09年)WBC連覇後に胃潰瘍で自身初のDL入りも9年連続200安打。翌シーズンの10年連続200安打を公約し「結果ではなくて過程で自分がどうあったかが凄く大事」

 ☆環境(10年)大リーグ史上初の10年連続200安打を達成。保護者に野球ができる環境の整備をお願いし、子供たちには「家の中では得られないもの、素晴らしいものを野球を通じて感じていると思います。そのことを友達に伝えてほしい」

 ☆夢(11年)同年ドラフトで中日に3位指名された田島が同大会の出身であることに「みんなにとっても夢のある結果。僕も少年野球から頑張った。好きなことにエネルギーを注いで、そこからいろんなことを学んでほしい」

 ☆決断(12年)シーズン中にマリナーズからヤンキースに移籍し、オフにヤ軍と2年契約。「難しい局面になった時に必ず自分で決めてきた。難しいことに立ち向かう姿勢があれば野球はうまくなる」

 ☆困難(13年)日米通算4000安打も自己最低の打率・262。「失敗して、負けて抱いた悔しい思いが、今の僕を支えていると断言できます。今、目の前にある壁や困難を乗り越えられれば、将来の大きな支えになる」

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