大谷の「二刀流2年目」(2)並外れた対応力で「10勝10発」

[ 2014年12月20日 11:03 ]

フォームを修正し10号アーチ。2桁勝利&2桁本塁打を達成した大谷

 9月7日のオリックス戦(京セラドーム)。1―5の4回1死だ。日本ハム・大谷は上体を大きく反らせ、バットが背中にぶつかりそうなほどに振り抜いた。踏み込んだ右足の爪先が上を向く姿は、まるで大リーグ史上最多の通算762発を放ったボンズ(元ジャイアンツなど)のようだったが「あれは(右足が)滑っただけ。あの打席は(本塁打を)狙っていたので、ちょっと力が入った」と恥ずかしそうに笑った。

 吉田一の直球を弾丸ライナーでバックスクリーンへ突き刺した10号ソロ。当時、すでに10勝を挙げており、大リーグで1918年にベーブ・ルース(当時レッドソックス)が記録して以来の同一シーズンでの「2桁勝利&2桁本塁打」を達成した。それでも「ダイさん(陽岱鋼)がその回に一発を放っていたし、負けていた展開で配球的にも、長打を狙うべきカウント(2ボール1ストライク)だった」と冷静に振り返った。さらに「うれしいというか、それだけの成績を目標として頑張れたのは凄くありがたかった」と続けた。大リーグの伝説の選手と比較されたことを重圧にせず、大きな力に変えていた。

 この頃、大谷の打席での構えが、開幕時より大きく変わっていた。肩幅より広く両足を広げ、右足を一塁方向に引く、いわゆる「オープンスタンス」。もともと、バッターボックスに対して平行に立つ「スクエアスタンス」だったが、シーズン序盤から徐々に右足を開き、8月中旬からはスタンス自体も広くした。その理由について「左足に体重を乗せやすくするため」と説明。疲労がたまり下半身の粘りがなくなっていることを感じ、自ら試行錯誤した中で最も力が伝わる構えがそれだった。

 大谷は「打席では重心の位置を1試合ごとに変えたり、同じ意識で臨む方が珍しい」と言うが、ステップ方向や球の見え方が異なる「オープンスタンス」は一朝一夕で習得することは難しい。栗山監督も「ベスト(な打ち方)ではない」と前置きしつつ「いろいろな状況や体調の中で考えながらやっている。後ろに重心を残そうという意識はいい」と評価した。

 試合前のフリー打撃では、時に「どこまで飛ばせるか」とミランダと競い合った。どこか、ピリピリムードが漂う「投手・大谷」に比べ「野手・大谷」には、笑顔と余裕があった。「自分の満足度のためにやっている。9本と10本では全然違う。今、考えると凄く大事な数字だった」。自ら思考し、それをシーズン中に修正し、結果を残した。1メートル93、93キロの体格から放たれるのはパワーだけではない。この並外れた対応能力こそが最大の武器だった。=続く=

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2014年12月20日のニュース