摂津　涙の６回零封　苦しんだ１年…ＣＳで３発ＫＯの雪辱

＜ソ・神＞秋山監督（左）と抱き合う摂津

日本シリーズ第５戦 ソフトバンク１－０阪神

（10月30日 ヤフオクＤ）
　ソフトバンク・摂津の大きな瞳から、自然と涙がこぼれ落ちた。この日限りでユニホームを脱ぐ秋山監督と熱く抱擁。悔しさ、ふがいなさ、歯がゆさ…。全てが吹き飛んだ。

　「監督を胴上げすることしか考えていませんでした。本当はもっと長いイニングを投げなくちゃいけないんでしょうけど、最低限の仕事はできた」

　序盤から落差のあるカーブを多投した。８９球中、全球種で最多の３２球。２回１死から西岡に左中間二塁打を許したが、関本を空振り三振、藤井を遊ゴロに仕留め、ピンチを断った。決め球はいずれもカーブだった。１００キロ台の緩い球を阪神の各打者が意識し始めると、中盤からは宝刀シンカーを織り交ぜた。６回まで７奪三振。三塁すら踏ませない快投だった。

　苦しんだ１年。今季は右肩筋疲労と右手親指打撲で２度、出場選手登録を抹消された。先発転向４年目で初めて規定投球回に届かなかった。終盤の２試合で１３失点と打ち込まれ、球団史上初の３年連続開幕投手を務めた男がＣＳファイナルＳは第３戦の先発。だが、そこでもプロ入り初となる１試合３本塁打を浴び、２回７失点ＫＯとチームの足を引っ張った。

　決して口数は多くないが、常にチーム全体のことを考えてきた。６月、右肩筋疲労から１軍に復帰する際、リハビリを行った福岡市内の西戸崎室内練習場にスライディングパンツなど野球用品を差し入れた。故障者に早く復帰してほしいという願いからだった。斉藤リハビリ担当兼ファーム巡回コーチは「ありがたい。そういうことをやる選手には結果もついてくる」。その言葉通り、苦しんだエースが日本一をかけた大一番でよみがえった。秋山監督は「摂津の意地を見ました。さすがエース」と最敬礼した。

　前回、日本一となった１１年。中日との第７戦（ヤフードーム）で９回２死一塁から登板し、胴上げ投手となった。あれから３年。今度はエースとして、日本一を決める試合をつくった。

　≪救援１失点だけ≫ソフトバンクは４投手の継投で完封勝利。優勝決定試合で完封は昨年の楽天に続き２年連続となった。ソフトバンク投手陣は今シリーズ５試合１０失点のうち９失点が先発投手で、救援投手の失点は第３戦サファテの１点（自責１）だけ。先発防御率２．９３に対し救援防御率は０．５２（１７回１／３、自責１）と、９７年ヤクルトの防御率０．４１（２２回、自責１）に次いで２番目の好成績（救援１５イニング以上）。試合の中盤以降は阪神打線をほぼ完璧に封じた。