武田“魔球”で虎止めた!6回2死まで完全、落差極大縦カーブ

[ 2014年10月27日 05:30 ]

7回1失点でシリーズ初勝利の武田(中)はサファテからウイニングボールを受け取る(左は秋山監督)

日本シリーズ第2戦 ソフトバンク2-1阪神

(10月26日 甲子園)
 21歳右腕が猛虎の勢いを止めた。ソフトバンクの武田翔太投手(21)が、最速150キロの速球と縦に割れる独特のカーブを武器に6回2死までパーフェクト投球。野球人生初の甲子園にも動じることなく、7回3安打1失点で日本シリーズ初登板初勝利を飾った。救援陣も踏ん張り、阪神のポストシーズン初戦からの連勝を6(1分け)でストップ。1勝1敗のタイとし、28日は本拠地・ヤフオクドームでの第3戦に臨む。

 「なんだ、この球は」と言わんばかりに、1球ごとに甲子園がざわついた。武田の投じる球の正体はカーブ。縦に大きく割れる「魔球」に阪神打線は内野ゴロの山を築いた。6回2死まで一人の走者も許さない。日本シリーズ初登板、そして甲子園初登板とは思えないマウンドさばきだった。

 18人目の打者となった代打・狩野に左前打され、快挙は逃したが「周りに言われて“あ、そうか”と思った」と動揺するどころか、トレードマークの笑みさえ浮かべた。続く西岡にうまく右翼線に運ばれて1点を失ったものの、7回を3安打1失点。阪神に今ポストシーズン初黒星をつけた。

 「カーブがうまく決まった。それだけですね。途中から(カーブを)振ってきたけど、捨てずに投げ続けた」

 独特の軌道を描く武田のカーブには「秘密」がある。右手親指の爪だけ、5ミリほど伸ばしている。伸ばせば割れるリスクも伴う。やすりなどを使い、なるべく短く手入れする投手が大半だが「ボールに引っ掛けるんですよ」と明かす。爪を食い込ませることで、グリップ力を高める。その結果、大きく縦割れし、なおかつ120キロ台と速さもある魔球を生んだ。

 初対戦となれば当てることさえ、困難だ。第1戦で3打点を挙げたセ・リーグの打点王ゴメスに対しては、2回無死では124キロの外角のボール球で空振り三振。捕手の手前で大きくワンバウンドするカーブを振らせた。5回無死の第2打席も外角122キロで泳がせて三ゴロに仕留めた。
 「初めて。ファームでも投げたことはない」という甲子園。選手会長のひと言が21歳の緊張を和らげた。初回、先頭の西岡を投ゴロに仕留めると三塁から松田が近づいた。「全国中継やってるんだから笑えよ。おまえは笑った時が力出せる」。これで笑顔と平常心を取り戻した。6回2死一塁で、西岡に適時二塁打を打たれても笑った。

 「最初は緊張したけど、楽しめた」。宮崎日大3年夏は、甲子園にあと3勝となった準々決勝(対鵬翔)で9回に足がつって降板。チームは0―1のサヨナラ負けを喫した。高校時代は届かなかった聖地。ヒーローインタビューでは「またひと回り大きくなれたかと思う」と声を弾ませた。

 大事な2戦目に3年目の右腕を起用した秋山監督は「甲子園の応援も凄いけど、負けずにピッチングができた。素晴らしかった。最高だよ」と珍しく多弁だった。1勝1敗のタイ。その立役者となった武田は試合後、チームとは別の出口へ向かってしまい、今度は苦笑いでナインが待つバスにたどり着いた。初甲子園の影響は最後に「迷子」になったことだけだった。

 ◆武田 翔太(たけだ・しょうた)1993年(平5)4月3日、宮崎県出身の21歳。宮崎日大では1年秋からエースで、3年夏は宮崎大会8強止まりで甲子園出場はなし。11年のドラフト1位でソフトバンクに入団した。1年目の12年に8勝1敗、防御率1・07でパ特別表彰の優秀新人賞受賞も13年は4勝止まり。1メートル86、82キロ。右投げ右打ち。

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