右手薬指から出血も…大谷、金子に投げ勝ち「大きな経験」

[ 2014年10月12日 05:30 ]

<オ・日>6回3失点ながら粘りの投球で勝利投手になった大谷

パ・リーグCSファーストS第1戦 日本ハム6―3オリックス

(10月11日 京セラD)
 日本最速投手が、日本最高投手を制した。プロ野球は11日、クライマックスシリーズ(CS)ファーストステージ(3試合制)が開幕し、パ・リーグはレギュラーシーズン3位の日本ハムが同2位のオリックスに6―3で勝った。先発の大谷翔平投手(20)は2回に4連続四死球で2点を失ったが、粘りの投球で6回3失点でしのぎ、CS初登板初勝利。オリックス・金子千尋投手(30)に投げ勝った。日本ハムは12日の第2戦に勝てば、2年ぶりのファイナルステージ進出が決まる。

 ここまで感情をあらわにする大谷は初めてだった。6回、3―3に追いつかれてなお2死一、二塁のピンチ。伊藤に一、二塁間を抜かれたが、右翼・西川が好返球で二塁走者を補殺。この瞬間、本塁後方にカバーに入っていた大谷は右拳を高々と突き上げ、振り下ろすと同時に吠えた。

 「こういう雰囲気で投げたことはない。心と体の不一致はあったけど、勝ったことで僕の中で凄く大きな経験になった。本当に野手の方に感謝です」

 腹はくくったはずだった。CS進出が決定した翌日、9月30日。この日の先発を札幌ドームの監督室に呼ばれ、通達された。「おまえに命を預けた」との指揮官の言葉に、「頑張ります」と短く返答。その時の大谷の様子を、栗山監督は「あんなうれしそうな顔は初めて見た」と回顧した。

 しかし、プロに入って初めて経験する大舞台。重圧は想像以上だった。大谷の右手の薬指は鮮血でにじんでいた。「ブルペンから血が出ていた。気にしすぎても良くないので、治療はせずにそのままいった」。ブルペンの段階から体に力が入り、投球バランスを崩した。リリースの瞬間に力み過ぎて、ボールを支える親指の爪で自らの薬指を切った。ダルビッシュ(レンジャーズ)も、08年の北京五輪では使用球が滑りやすく、制球するため押さえ付けようとして同様の負傷を負った。いかに余計な力が入っていたかの証拠でもあった。

 さらに「ペース配分しようかなと思ったらおかしくなった」。2回2死走者なしから突如崩れた。二塁打を浴びた後、4連続の四死球で2失点。プロ入り初の2者連続押し出しだった。

 狙われてもいた。今季だけでも3度にわたって右ふくらはぎをつって降板した右腕に、オリックス打線は初回からセーフティーバントで揺さぶってきた。構えだけも含めると、2回までに実に計5度。大谷はそのたびにマウンドから駆け下りていたが、三塁手の近藤から「一回一回、下りてこなくていい」と声を掛けられ、降板するまで計8度の仕掛けにもスタミナの消耗を最小限に防げた。

 この日は最速160キロで、それも1球だけ。それでも、3~5回は3者凡退と立て直して6回3失点。結果として、「初対戦」となった最多勝、最優秀防御率の今季2冠の金子に投げ勝った。大事な初戦で貴重な白星を手繰り寄せた右腕を、栗山監督は「技術というより、魂という雰囲気で臨んでくれた」と称えた。

 第2戦は欠場予定。第3戦までもつれれば打者として出場する可能性がある。「切り替えて準備したい」。その視線はもう先に向けられていた。

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