なぜ繰り返された虎の9月失速 8月の戦い方に決定的な違い

[ 2014年9月24日 11:03 ]

<D・神>9回表無死一塁、福留(8)と荒木(58)の三振併殺に厳しい表情の和田監督(左)

 阪神のセ・リーグ優勝の可能性が完全消滅した。9年ぶりのV奪回を至上命題としながら、開幕から一度も首位に立つことなく終戦。昨年に続く9月の失速ぶりも目立った。V逸の要因を徹底検証する。

 大一番と位置づけた9日からの巨人3連戦(甲子園)に3連敗。この時点で7・5ゲーム差まで離され、逆転優勝はほぼ不可能な数字となった。直前5日からの中日3連戦にも3タテを食らっており、都合6連敗。和田監督が何度も繰り返してきた「勝負の9月」のフレーズがむなしく聞こえた。

 一体なぜ…。今年もまた、9月に大失速した。昨季も8月後半まで巨人と優勝争いを繰り広げながら、9月に6勝16敗と完全に息切れした。シーズン後のオーナー報告会で和田監督は、「スタミナ不足。体力だけでなく精神面も含めて」と語り、今季は十分に対策を打ってきたはずだった。

 試合の組まれていない月曜日の過ごし方に、今年は変化が見られた。先発投手の指名練習に充てられ、連日試合に出場する中継ぎ投手と野手は休養日となるのが通常だが、その月曜日に4月だけで3度も、上本、大和らの若手野手が指名練習に参加した。

 ある球団関係者が言う。「監督は夏場以降を見据えて、あえて月曜日も若い選手に練習を課していた」。投手陣も例年以上に走り込みの量が増えていた。従来の1・5倍程度のダッシュを黙々とこなす…。すべては144試合を息切れせずに走り抜くためだった。

 しかし…。いざ9月に突入すると首位の巨人は14勝5敗と勢いは増し、阪神は8勝11敗。差は開く一方だった。なぜ? 対策は練ったはず…。しかしペナントレースのヤマ場に向けて、巨人には阪神を上回る周到な準備が施されていた。

 巨人・原監督の7月終わりの言葉だ。

 「今年は最後までもつれるかもしれない」

 8月の、原監督の先を見据えた戦いぶりは徹底していた。点差が開いた展開では早々に守備固めを起用して主力野手の体力消耗を回避した。登板過多が目立つ中継ぎには、先発投手と同様の「上がり日」を設定。投手にも野手にも、コンディショニングに細心の注意を払った。また打撃不振が目立った片岡を8月6日に出場選手登録を抹消。ファーム施設でミニキャンプを敢行させて、19日に呼び戻した。

 豊富な戦力を擁する巨人だからできた…では、片付けられない。終盤までもつれる試合展開が多かったとはいえ、阪神の主力メンバーはほぼフルで試合に出続けた。巨人が8月の27試合で24人の野手が出場したのに対し、阪神は25試合で19人。2軍から活きの良い若手野手が台頭することはなく、チーム内競争も乏しかった。

 8月、阪神は13勝12敗、巨人は13勝13敗1分けとほぼ互角の数字が並んだ。だが、勝負と位置づけた月が始まった途端、決定的な差が生まれた。選手個々の成績では劣る巨人がここぞで力を発揮した。苦戦していたようにも見えた巨人が、シーズン最後にチーム力を誇示した。またも、繰り返された「悪夢の9月」。このV逸の原因を分析・解消しないかぎり、来季にまた、同じ失敗が繰り返される。

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2014年9月24日のニュース