黒田 野茂以来の日米通算3000投球回「体のあちこちに痛みが出てきそう」

[ 2014年9月16日 05:30 ]

<オリオールズ・ヤンキース>力投する黒田(AP)

ア・リーグ ヤンキース2―3オリオールズ

(9月14日 ボルティモア)
 ヤンキースの黒田博樹投手(39)が14日(日本時間15日)、オリオールズ戦に先発。7回を6安打1失点と好投し、3回には日米通算3000投球回に到達した。日米通算ではドジャースなどで活躍した野茂英雄氏(46)に続く2人目。日本で黒田と同じ大卒出身では過去に2人しかいない。黒田は同点のまま降板し、9回に逆転サヨナラ負け。11勝目はならなかったが、先発投手としての金字塔を打ち立てた。

 黒田の言葉には実感がこもっていた。「考えると、体のあちこちに痛みが出てきそうなイニング数。大学(専大)を卒業してプロに入り、こんなに投げられるとは思っていなかった。周りの人に感謝したい」。不惑を間近に控え、たどり着いた数字をそう振り返った。

 3回、先頭のハンドリーをスプリットで三ゴロに打ち取り、日米通算3000投球回に達した。日本との通算記録だが、敵地の記者席でもしっかりとアナウンスされた。その後も地区優勝へ突き進む強力なオ軍打線をねじ伏せた。7回1失点ながら、援護がなく同点のまま降板。「スプリットで緩急をつけて打者の目先を変えられた。うまく使い、何とか7回までこられたかな」と熟練の投球術は健在だった。

 制球力が支える投球術と、頑強な肉体で、日米通算18年目での節目につなげた。09年8月には打球が頭部に直撃するアクシデントに見舞われた。翌年にも張りを訴えることがあったほどの重症だったが、2カ月後には復帰し、弱音は吐かず投げ続けた。渡米当初はスライダーを武器としたが、今ではこの日軸球としたスプリットが生命線。「以前は一度浮いてから落ちる軌道だった。今は低めに真っすぐと同じ軌道でいき、シュート気味に動く感じにしている」。空振りも奪えるし、バットの芯を外して凡打の山も築く。そのスプリットをストライクゾーンに投げ続けるから、打者は手を出さざるを得ず、100球前後の球数制限があるメジャーでも長い回を投げられる。この日も94球中、7割の66球がストライク。打者27人に対し、15人の結果球がスプリットで、右打者のバットを2本へし折った。

 先発投手陣で開幕から唯一ローテーションを守る右腕は、40歳を迎える来季もチームから残留オファーが届くことが濃厚だ。ワイルドカード争いで2位・ロイヤルズと5ゲーム差と、プレーオフへの道のりは険しい。沈むチームの中で、無援に泣いても腐らない。「この時期、誰もが体力的にしんどい。次の登板に向けて調整して、いい状態で迎えたい」。記録に浸ることなく、すぐ次をにらむひたむきな姿勢こそが、金字塔への最大の原動力に違いなかった。

 ▼オ軍デーブ・ワレス投手コーチ(95年に野茂がメジャーデビュー時のド軍投手コーチ)野茂と黒田に共通するのは練習熱心さと下半身の強さ。その上で重要なのはストライクを投げること。野茂の時代より球数制限は厳しくなり、ボールが多いと長いイニングは投げられない。

 ≪野茂超えあと23イニング≫黒田は日米通算3004回2/3とし、野茂の3027回2/3にあと23イニングと迫った。順当なら今季中の先発機会はあと2回で、来季早々にも更新する可能性が高い。日本での3000投球回到達者は5526回2/3の金田正一を筆頭に27人いるが、黒田と同じ大卒ではいずれも阪神で活躍した3557回1/3の若林忠志と、3050回1/3の村山実の2人だけ。現役では中日・山本昌(3342回1/3)とDeNA・三浦(3149回)の2人。

 また黒田はヤ軍移籍後では95試合目の先発で、防御率3・46。90年以降ヤ軍で50試合以上先発した投手の中で最も低い。サバシア(3・59)、ペティット(3・94)、クレメンス(4・00)、ランディ・ジョンソン(4・37)ら名だたる投手を抑えてトップだ。本拠地が打者有利なため防御率は高くなる傾向があり、イニング数だけでなくその投球内容も濃い。

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2014年9月16日のニュース