大谷 2年目急激飛躍の秘密 まっすぐな軸足でフォームが安定

[ 2014年8月27日 07:50 ]

今年の大谷の投球フォーム

パ・リーグ 日本ハム4-2ソフトバンク

(8月26日 ヤフオクD)
 高卒2年目で早くも2桁勝利を挙げた大谷。ここまで急激な成長を見せている要因は何か。筑波大野球部監督で同大体育系の川村卓(たかし)准教授(44)が分析した。底知れないスタミナや安定感が増した制球力。そして今季マークした日本タイ記録162キロの剛速球の秘密に迫った。

(1)底知れないスタミナ

 昨季は11試合に先発し、1試合あたりの平均投球回数は5回1/3。今季は主に中6日で先発ローテーションを回っていながら6回2/3。100球以上投げた登板も昨季の4試合から、今季はすでに13試合と確実にスタミナアップしている。これまで約400人の野球選手の投球・打撃フォームを分析している川村准教授は、今季の大谷について「投球フォームに安定感が増した。それが、球数が多くなっても疲労が少ない効率の良さにつながっている」と解説する。今季は軸脚が真っすぐ伸びている。昨季のように軸脚を曲げてしまうと、脚に力をためるより姿勢を保つバランスを取るために力が使われ、効率的ではないという。同准教授は「これは体幹および股関節のトレーニングがしっかりと行っていることを示している」。事実、大谷は昨季から体幹を重視したトレーニングで筋力を強化。体重は入団時の86キロから93キロ、胸囲も98センチから106センチに増え、太腿回りは5センチ、腕回りは3センチ太くなった。肉体的成長が効率よく体重移動ができる姿勢の良さを支え、終盤でも力を発揮できる原動力となっている。

(2)安定した制球力

 今季はここまで与四死球率(1試合あたりの与四死球数)が3・20で、1年目の5・98から激減。制球力が格段にアップしている。川村准教授は「今季は昨季より体重が軸脚(右脚)に残っていることで、下半身の力を上半身により伝えられる。体重が残っていることで狙ってから投げることができる」と分析。つまり、体重が昨季のように前にいってしまうと、すでに腕を振る体勢になってしまっているから制球することが難しくなるというのだ。体重がピッチャーズプレート側にギリギリまで残っていることでその間に狙いを定め、投球動作に移ることができる。下半身、上半身の連動性が今季の安定した制球力を生み出していると言える。

(3)球速アップ

 7月19日のオールスター第2戦(甲子園)で球宴最速、日本タイ記録の162キロをマーク。160キロ以上を計測した試合も公式戦では5試合と驚異的だ。この急成長の要因は何か。今季の方が腕のしなりが明らかに大きいのが分かる。体幹と投げる腕の間にできる角度が「最大外旋角度」で、112度から、132度まで拡大したという。では、腕がしなるとなぜ速い球が投げられるか。投球は、この最大外旋角度から腕が加速され、球がリリースされる。この角度が大きければ大きいほど、リリースまでの距離を長くすることができ、加速を大きくできるのだ。つまり、弓矢の原理と一緒だ。同准教授も「昨年の数値(112度)も私たちが調べた優れた投手の中でもトップクラス。田中(ヤンキース)も110度前後だった。今年の数値(132度)はずばぬけている」と驚く。さらに「これが大谷投手が170キロを投げることが可能と言える根拠。チャプマン(レッズ)に匹敵する」とまで話した。今季初登板の4月3日のソフトバンク戦(ヤフオクドーム)では直球の平均球速は149・9キロだったが、6月11日の巨人戦(札幌ドーム)では同156・7キロ。安定感が増した投球フォームも、球速アップの要因の一つとなっている。

 ◆川村 卓(かわむら・たかし)1970年(昭45)5月13日、北海道生まれの44歳。札幌開成の主将として88年夏の甲子園に出場。筑波大でも主将を務める。同大大学院体育研究科修士課程コーチ学専攻修了。現在は同大体育系准教授(コーチング学専攻)、野球部監督を兼任する。教え子には藤井淳志(中日)ら。主な著書に「甲子園戦法 セオリーのウソとホント」(朝日新聞出版)など。

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