マエケン 今季初完封10勝 ユニに喪章つけ139球12K熱投

[ 2014年8月23日 05:30 ]

<広・神>喪章をつけて力投する前田健

セ・リーグ 広島6-0阪神

(8月22日 マツダ)
 鎮魂の白星だ。広島・前田健太投手(26)は22日、阪神戦に先発し、散発5安打、12奪三振の快投で、今季初完投初完封。7月12日の中日戦(ナゴヤドーム)以来となる白星で自身5年連続2桁勝利となる10勝目を挙げた。同戦では広島市の土砂災害の犠牲者を悼み、喪章を袖につけての熱投だった。防御率2・48としリーグトップに返り咲いたエースの「復肩」で、巨人、阪神との三つ巴のペナントレースがますます熱くなる。

 特別な思いを背負った139球だった。後半戦は白星がなかった前田健が、今季これまで2度対戦して計10失点していた阪神打線を5安打に封じ、41日ぶりの勝利。5年連続の2桁勝利を今季初完封で飾った。

 「被害に遭った方から僕のブログに“唯一の楽しみはカープが勝つこと”とメッセージがあった。明るい材料になればと思ったし、これからも勝っていきたい」

 20日未明の局地的豪雨で多くの犠牲者を出した広島市の土砂災害。災害発生時に、チームは横浜に遠征中。ナインは無力感を感じながら、この日に広島に戻った。そして、災害発生後初めてのマツダスタジアムでの試合。選手は喪章を袖につけ、試合前には球場全体で黙とうがささげられた。鳴り物を使った応援は自粛され、球団旗などが半旗で掲揚された。

 前回登板となった15日の巨人戦(マツダ)は雨中の投球でいら立ちをあらわにし、3回6失点。「ふがいない最低な姿、立ち居振る舞いを見せてしまった。凄く悔しかったし、後悔しかなかった」と振り返る。この日は「状態が悪かったので気分転換」と言うように、昨季途中から取り入れていたノーワインドアップ投法をやめ、従来の振りかぶって投げるスタイルで臨んだ。「心」も充実していた。

 「しっかり(チームを)引っ張っていけるような投球をしたい。きょうは完封しないと、意味がないと思っていました」。燃える闘志と同じような真っ赤なユニホーム。この日の阪神戦から今季のチームスローガンをもじった「赤道直火ユニホーム」を着用。現在、ビジター用として着用しているユニホームは、スペイン国旗をモチーフにした深みのある赤色だが、今回はモロッコの鮮烈な赤が特徴。何よりホームで赤を着るのは球団史上初の試みだった。

 序盤から直球、スライダーともに切れ、6回までに許した安打は4回先頭の鳥谷の内野安打1本という抜群の安定感だった。奪った三振も今季最多の12。特に4番ゴメスを4打席4三振と抑え込み「狙って取れたところもあった」と復調の手応えをつかんだ。

 2位阪神に1・5ゲーム差と迫った野村監督も「一にも二にもマエケン。素晴らしい内容だった。いい形でエースが戻ってきてくれた」と大絶賛。逆転優勝へ向け、フル回転が不可欠な右腕は「巨人と阪神戦に投げて結果が出なくて悔しい思いをしていたので、ホッとしています。これをきっかけに乗っていかないといけない」とかみしめるように言った。

 ≪5年連続2桁勝利≫前田健(広)が昨年6月30日阪神戦以来となる完封勝利で今季10勝目。これで2桁勝利は10年から5年連続。広島で2桁勝利を5年以上続けたのは86~91年川口(6年)以来9人目だ。防御率も2・48とし、菅野(巨=2・58)を抜き14日以来のリーグ1位に浮上。前田健は12、13年とセ・リーグ4人目の2年連続防御率1位のタイトルを獲得。3度手にすれば56~58年稲尾(西鉄)に次ぎ、56年ぶり2人目のプロ野球タイ記録になる。

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