ご褒美はギョーザ!日本文理 新潟大会準決勝から5戦連続逆転勝利

[ 2014年8月22日 05:30 ]

<日本文理・富山商>9回1死一塁、劇的な逆転のサヨナラ2ランを放ち、吠えながらガッツポーズする新井

第96回全国高校野球選手権3回戦 日本文理6―5富山商

(8月21日 甲子園)
 日本文理(新潟)が劇的なサヨナラ勝ちを収め、準優勝した09年以来5年ぶりの8強入りを決めた。今春の北信越大会決勝の再戦となった富山商との3回戦で、1点を追う9回1死一塁から新井充内野手(3年)が左越えにサヨナラ2ランを放った。新潟大会準決勝から5戦連続で逆転勝利。大会史上18人目の劇弾で勢い付いたチームは、22日の準々決勝で聖光学院(福島)と対戦する。

 左翼手は追うのをやめて、ただ見送るだけだった。4―5の9回1死一塁。快音を残した新井の打球は、一直線に左翼席に飛び込んだ。逆転サヨナラ2ラン。一瞬遅れて大歓声が湧く中、ヒーローはあっという間にダイヤモンドを一周した。

 「打った瞬間にいったと思いました。(走っている間は)何を考えたか覚えてないです。ただ、ゆっくり走ってはダメなんだろうな、と」

 自らのミスを帳消しにした。2―1の6回無死一塁の場面で、セーフティーバントを試みた後、スリーバントにも失敗した。自分の判断だった。「得点が欲しい場面だったので…」。大井道夫監督からは「ダメだよ、勝手な判断したら。おまえだから打たせるんだ」と諭された。だから9回は走者を送ることなど考えず、迷いなく打席に向かった。

 新井は1回戦の大分戦でも、1点を追う4回に一時は逆転となる左越え2ランを放った。この日も土壇場まで追い詰められたが焦りはなかった。「俺たちなら逆転できる」。ナインの脳裏に新潟大会決勝が浮かんだ。関根学園戦。1―2の9回に小太刀が逆転サヨナラ3ランを放ち、甲子園切符をつかんだ。これで同準決勝から5試合連続の逆転勝ち。指揮官はこう語る。「諦めないことをモットーにしている。7回からがうちの勝負だと言っている」

 女手一つで新井を育ててきた母・奈緒美さん(47)は「信じられません。甘えん坊だったのに」と感激した様子。進学先を決める際にはチラシの裏に「泣き言は言わない」「レギュラーを獲れなくてもあきらめない」「自分で解決する」などと書き込み「これを守るから日本文理に行かせて」と頼んできたという。何を聞いても「姉ちゃんどうする?」と姉に頼りっきりだった愛息は、今では寮長を務めるまでに成長した。

 これで日本文理は甲子園通算10勝目。9―10で中京大中京(愛知)に敗れ準優勝した09年以来、5年ぶりに8強進出を果たした。あの時つかみ損ねた山の頂が、おぼろげながら見えてきた。

 ▼日本文理・大井監督 めったに生徒を褒めないけど、きょうは打った新井を褒めるべき。大したもの。帰ったら(夕食に)ギョーザくらい付けてやるかな。

 ◆新井 充(あらい・まこと)1997年(平9)2月15日、新潟県生まれの17歳。小2から軟式野球を始める。糸魚川中3年時にKボールの新潟選抜に選出され、全国大会で準優勝した。通算6本塁打で、公式戦の本塁打は甲子園での2本だけ。好きな言葉は「我以外皆我師」。1メートル70、66キロ、右投げ右打ち。

 ≪10年ぶり5本目≫日本文理の新井が富山商戦の9回に逆転サヨナラ2ラン。夏のサヨナラ本塁打は09年に中京大中京の河合が関西学院戦で打って以来、大会通算18本目。逆転サヨナラ本塁打は04年に東海大甲府の清水が聖光学院戦で打って以来、10年ぶり5本目。

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