西嶋 超遅球で幻惑12K!東海大四、大金星で21年ぶり1勝

[ 2014年8月15日 05:30 ]

<九州国際大付・東海大四>8回2死、清水に対して西嶋が投じた超スローカーブ

第96回全国高校野球選手権1回戦 東海大四6―1九州国際大付

(8月14日 甲子園)
 超遅球に甲子園が沸いた。21年ぶりに出場した東海大四(南北海道)が優勝候補の九州国際大付(福岡)を6―1で破る大金星を挙げた。立役者は先発した西嶋亮太投手(3年)。プロ注目のスラッガー、清水優心捕手(3年)ら主軸相手に計測不能の超スローカーブを投じ、緩急を生かして強力打線を幻惑した。今大会最多の12奪三振。153球を投げ抜き、5安打1失点で完投勝利を収めた。

 1メートル68の小さな体を目いっぱいに使って、跳ねた。西嶋が投じた153球目、最後の打者を135キロ直球で一邪飛に仕留めると、相好を崩した。

 「コントロールが良かった。100点満点」。福岡大会7試合で7本塁打、65得点の強打を誇る九州国際大付打線に対し、用意した秘策は超スローカーブ。4回、先頭の3番・古沢への初球は大きな弧を描いて捕手のミットに収まった。「打線がいいのでワンパターンだとやられる。あの球を投げれば余裕が出る」。計測不能の超遅球。今大会最多タイの4万7000人の観衆をどよめかせた西嶋は「歓声を聞こえるようにして、力に変えようと思った」と振り返り、6回にも古沢に2球続けて投じた。

 西嶋らしさが詰まった勝負は8回にあった。2死後に今秋ドラフト候補に挙がる4番・清水を迎えた。初球の超スローカーブは外れたが、スライダーでカウントを整え、チェンジアップを見せ球に使う。そして、最後は外角高め直球で空振り三振。6回に左越え適時二塁打を許した強打者に雪辱した。「打者の目線を上げさせて、他の球を生かす」という狙い通りの配球。女房役の上野は「相手は明らかにイライラしていた」と、してやったりの表情だった。

 90キロ台の「通常の」スローカーブと投げ分ける器用さ。甲子園の球速表示では出せない超遅球は以前に「58キロ」を計測したことがあるという。直球とスライダーだけでは単調な組み立てになるため、昨秋からブルペンで投げ始めた。最後の夏を前に公式戦でも使えるようになり、甲子園でも4球披露。全て見逃しのボールとなったが、「超」がつく緩急を生かした。

 5安打で1失点完投。今大会最多の12三振を奪った。ピンチの場面では、2年前に大会最多記録の22奪三振をマークした桐光学園・松井裕樹(現楽天)と同じように、相手校の応援歌を口ずさんでから切り抜けた。

 東海大四は大脇英徳監督が主将を務めた21年前の8月14日に東福岡を破った。ユニホームを当時の色合いに戻して臨み、同じ日、同じ福岡県勢に勝利。指揮官は「普通あんなボールを投げますか?なめているというか…」とエースの度胸に舌を巻いた。最速138キロでも緩急を使えば甲子園で勝てる。小さなエースが優勝候補を手玉に取った。

 ◆西嶋 亮太(にしじま・りょうた)1996年(平8)4月10日、北海道生まれの18歳。小1から野球を始め、帯広翔陽中では、とかち帯広シニアに所属し、最高成績は全道大会優勝。東海大四では1年春からベンチ入り。将来の目標はプロ野球選手。50メートル6秒0、遠投80メートル。1メートル68、59キロ。右投げ右打ち。

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