後藤 道しるべ弾 息子誕生日にパパの行きざま見せた

[ 2014年6月29日 05:30 ]

<D・広>お立ち台でファンの声援にポーズをとる(左から)グリエル、後藤、筒香

セ・リーグ DeNA7―4広島

(6月28日 横浜)
 涙がこぼれそうだ。そぼ降る雨に濡れたヒーローインタビュー。言葉に詰まり、DeNA・後藤は声を張り上げた。

 「きょうは特別な日にしようと思って球場に来ました。輪太郎ーッ、誕生日おめでとう!」

 お立ち台では隣の2人が笑っている。グリエルと筒香。梅雨空を吹き飛ばした3人のアーチストの中、大トリ・後藤のマイクパフォーマンスで興奮のボルテージは最高潮に達した。DeNA史上初となるクリーンアップそろい踏み。それは息子を思うパパの熱いハートが号砲だった。

 3回だ。逆転してなおも1死一、二塁。後藤のバットは、広島・バリントンの初球スライダーに鋭く反応した。「打った瞬間に分かった」。打球の行方も確認せずに右手を突き上げた。価値ある4号3ラン。これで流れを引き寄せると5回にグリエル、筒香も連弾で続く。後藤の熱さが呼んだそろい踏みだった。

 横浜高で松坂(現メッツ)と活躍してプロ12年目。34歳のパパは6歳の誕生日を迎えた長男・輪太郎くんに「人形を取ってくるね」と約束していた。本塁打賞のスターマン人形。これまで記念日に一度も活躍したことがなかったから、どうしても打ちたかった。思えば3年前、西武からDeNAへトレード通告を受けた日。後藤を励ましたのが当時3歳の輪太郎くんだった。「お引っ越しするけど大丈夫?」と聞くと「いいよ、輪ちゃんも頑張るからパパも頑張ってね」。その一言が新天地での支えとなり、この日も左内転筋が万全ではない状態で、主砲・ブランコの穴を埋めて5番の役目を果たした。

 中軸の3発は横浜時代の09年以来で、当時の内川、村田、佐伯はもう誰もいない。「DeNAでは初めてなの?そりゃ勝たなきゃな。いいところで出たね」。中畑監督が絶賛する中、ヒーローはこう続けた。「僕が頑張ることで輪太郎の道しるべになりたい」。後藤にもDeNAにとっても最高の記念日だった。

 ≪5年ぶり≫DeNAはグリエル、筒香、後藤と3~5番が本塁打。同一試合にチームのクリーンアップが本塁打したのは09年6月7日ロッテ戦で3番・内川、4番・村田、5番・佐伯がそろい踏みして以来5年ぶり。ただし、前回は7―9で敗れており、クリーンアップ弾が勝利に結びついたのは06年9月19日中日戦(3番金城、4番村田、5番吉村)で8―5と勝って以来8年ぶりだ。

 ≪7年ぶりなるか≫DeNAは5月を13勝12敗と勝ち越したが、今月も1試合を残し9勝8敗。試合数の少ない3、10月を除き、チーム2カ月連続勝ち越しは横浜時代の07年6月に13勝6敗1分け、7月に10勝9敗と記録したのが最後。きょうの広島戦に勝つか、引き分けても7年ぶり、中畑監督指揮下では初のケースになる。

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