原監督、執念采配…貢さん譲り勝負手 長野二盗で劇打呼んだ

[ 2014年6月7日 05:30 ]

<巨・西>ファンの声援に応える原監督

交流戦 巨人4-3西武

(6月6日 東京D)
 天国の父にささぐ執念の白星――。巨人は6日、西武戦で延長10回の末、4―3で今季3度目のサヨナラ勝利を収めた。原辰徳監督(55)は同日、東京都世田谷区で、5月29日に心不全のため死去した父で東海大野球部名誉総監督の原貢(はら・みつぐ)氏(享年79)の葬儀・告別式を終えた。近親者のみで営まれ、同戦に先発して8回3失点と力投した孫の菅野智之投手(24)も参列した。お別れの会は7月14日午前11時から東京ドームホテルで開かれる。
【試合結果】

 帽子を掲げた原監督の視線は、スタンドを越え、天国まで届いていた。延長10回の熱闘の末にもぎ取ったサヨナラ勝ち。父・貢氏が荼毘(だび)に付された日に、師でもある父の鬼気迫るタクトが乗り移った。

 「親父が私に常々言っていたのは“人生はチャレンジ。ぼろは着てても心は錦。正々堂々勝負して、人生を進んでいこうじゃないか”だった」

 近親者のみの葬儀を終えて球場入り。時折、涙も浮かべたが、ユニホームに袖を通すと、いつもの勝負師の顔になった。同点の延長10回、先頭の長野が出塁すると初球に二盗。「まあまあ、その辺は皆さんでお好きに」と多くを語らなかったが、原野球の原点ともいえる土壇場の勝負手だった。自身が東海大相模1年夏の甲子園、土浦日大(茨城)との初戦。1点を追う9回2死一塁で父・貢監督は盗塁のサインを出し成功。同点に結びつけ延長16回サヨナラ勝ちした。状況は違えど終盤での果敢な攻撃。「思い切りのいい走塁をしてくれました」。父子鷹で「挑戦」と歩んできた野球人生の象徴とも言える攻撃だった。

 父から引き継いだ勝負手以外にも、生前に父から「俺を超えた」と言われた采配がさえた。昨年は4番も任せたロペスを初めて9番で起用し、5回に逆転の左中間14号3ラン。6回2死一塁のピンチでは脇谷の右中間への大飛球を、この回に中堅に入れた松本哲がランニングキャッチ。得点にはならなかったが8回1死一、三塁で鈴木の場面では代打・高橋由を用意しながら、ベンチにいた鈴木を打席へ。「併殺はない。(高橋由は)次の状況でもよし。二の矢というもので由伸でいった」と説明した。

 貢氏が他界した5月29日。楽天戦(東京ドーム)を終えた原監督は神奈川県内の病院へ急いだ。「辰徳がもう来るよ、もう少し頑張んなきゃ」。周囲の励ましに、父は最後の命の炎を燃やし、息子が病院に到着して5分後に息を引き取った。「よく怒られたし、師であり父であり、私の理解者であり、私のファンでもあった」。その父は、東海大からこの日、生前の功績が称えられ、東海大野球部名誉総監督に任命された。

 監督「原辰徳」の原点である父へ最高の手向けになった白星。「幸いにもこれからも勝負ができるのですから、その勝負に挑んでいきたい」。親子でつくり上げてきた原野球は進化をやまない。

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2014年6月7日のニュース