ブーイングで人間不信に…DeNA山口 2894日ぶり先発勝利

[ 2014年6月2日 06:44 ]

<ロ・D>今季初勝利の山口(右)は中畑監督と抱き合って喜ぶ

交流戦 DeNA1-0ロッテ

(6月1日 QVC)
 お立ち台で目を輝かせながら、DeNA・山口はスタンドを見回した。満面の笑み。そして大きな拍手。それがうれしかった。7年ぶりの先発マウンドで、6回2安打無失点の快投。

 プロ初登板だった06年6月29日の巨人戦(横浜)以来2894日ぶりの先発での勝利に、「(7回以降も)いかせていただけるならいけました。これからは生まれ変わった姿を見せられるように頑張ります」と言葉に力をこめた。

 救援の時は力で押し込んでいた投球スタイルを替えた。95球中、110キロ台の緩いカーブを21球と多投。最速148キロの直球にスプリット、フォーク、シュートと多彩な球種で翻弄(ほんろう)した。6回2死二塁のピンチも今江を内角低めのフォークで空振り三振。三塁すら踏ませず、中畑監督は「今日の投球は安心して見られた。先発の柱ができたね。“何で代えるんだよ”ってブーイングがあったけど俺も代えたくなかった」と称えた。

 人間不信に陥るほどのどん底を味わった。4月2日の巨人戦(横浜)で5点リードの8回1死満塁から6失点と炎上。その後は投げるたびに打ち込まれ、救援で名前がコールされるとスタンドからブーイングが起きた。1メートル87、95キロと体は大きいが性格は繊細だ。ファンに激励の声を掛けられても、「(僕に)ブーイングしていませんか?本当ですか?応援してくださいね」と真顔で返すほど精神的に追い込まれた。

 防御率7・62で5月5日に登録抹消。指揮官から先発転向を言い渡された。守護神で史上最速の100セーブを達成したプライドもある。だが、「先発するにしても抑えに戻るとしても一度リセットしないと」と気持ちを整理。走り込みに加え、食事も炭水化物を抜いて6キロ減の95キロまで絞った。体の切れを取り戻し、気温31度の真夏日での先発も余力は残っていた。

 チームも交流戦初の3連勝。「第2の野球人生。それぐらいの気持ちだった。初心に帰ってやりたい」。まだ26歳。苦しんだ分、チームと共にはい上がる。

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