マー君 ヤ軍新人64年ぶり開幕6連勝 危機救った初完封

[ 2014年5月16日 05:30 ]

<メッツ・ヤンキース>初完封勝利の田中(右)は捕手のマッキャンと抱き合う

インターリーグ ヤンキース4―0メッツ

(5月14日 ニューヨーク)
 マー君、キミこそエースだ。ヤンキースの田中将大投手(25)が14日(日本時間15日)、メッツ戦に先発し、4安打8奪三振でメジャー初完投初完封。無四球で無傷の6勝目を飾り、チームの連敗を4で止めた。同じニューヨークを拠点とするメッツとの「サブウエー・シリーズ」で、ヤ軍の投手が敵地で完封勝利を挙げたのは史上初めて。新人の開幕6連勝は球団では1950年のホワイティ・フォード以来64年ぶり、日本人では02年ドジャースの石井一久(スポニチ本紙評論家)の開幕連勝記録に並んだ。

 9回2死一塁、田中は3番ライトを迎えた。ジョー・ジラルディ監督が「最後の打者」と決めていたため、打ち取れなければ交代。メジャー最多の114球目、チェンジアップを投じ、打球はライナーで遊撃ジーターのグラブに収まった。メジャー初完封。「グッジョブ」。女房役マキャンの言葉に「サンキュー」と返して抱擁を交わした。

 「何とか(連敗を)自分で止めたいと思っていた。きょうは全体的に一番良かった」。開幕投手のサバシアが右膝を痛めて故障者リスト入り。黒田も調子が上がらず今季ワーストの4連敗中だった。「サブウエー・シリーズ」も昨季から6連敗中。苦況の中で最高の結果を残した新人右腕に対し、ジラルディ監督は「救援陣を休ませ、素晴らしい仕事。彼は特別だ。ここまでのチームで最も価値のある働き」と称えた。今やエースである。

 8試合目の登板。対戦球団に投球データが集まる中で、田中は進化を見せた。最速95マイル(約153キロ)の直球に宝刀スプリット、スライダー、ツーシーム、カーブを交える。基本スタイルにこの日はカットボールとチェンジアップも多投した。

 「幅広く、いろんな球を使っていろんな攻め方をできた」。特にチェンジアップは24勝無敗だった昨年もほとんど使わなかった球種だ。しかし、田中は昨年からひそかにブルペンで精度を高め、今年のキャンプでも投げていた。「何かしら困った時に。自分の引き出しの一つとして持っておきたい」。大リーグ公式球でスプリットが制球できない際の「保険」として練習してきたが、宝刀を警戒するメッツ打線を相手に投球の幅を広げた。

 初完投初完封に加え、「初づくし」はまだあった。9回2死の打席で通算288セーブを誇るバルベルデの95マイル直球を中前へ打ち返し、メジャー初安打を記録。「みんなからも“ヒットを打て”と言われていた」と笑った。安打の記念球もウイニングボールと一緒にもらった。

 先発4番手で開幕を迎え、チームトップの6勝目。日本時代からの連勝も34に伸びた。先発の柱として期待は高まるばかりで、田中自身も「1年目で投げるまでは柱とか中心とか見られていなかったと思う。これからも結果を残し、そう言ってもらえるように頑張る」と自覚をにじませた。自覚はそれだけではない。7年総額1億5500万ドル(約158億1000万円)の大型契約に対してだ。「数カ月で成功だとも思っていない。契約期間ずっと働くこと」。常に冷静で謙虚。この姿も勝ち続ける理由の一つだろう。

 ◆ホワイティ・フォード ヤンキース一筋で活躍した伝説の左腕。カーブを武器とし、ヤ軍歴代最多の236勝を挙げ、106敗10セーブ、防御率2・75。6度の世界一に貢献し、ワールドシリーズでの10勝、33イニング連続無失点、94奪三振はいずれも歴代最多。50年にメジャーデビューした時の背番号は田中と同じ19。その後、背負った16は永久欠番になっている。1928年10月21日、ニューヨーク市生まれ。85歳。

 ▽サブウエー・シリーズ ニューヨークを本拠地とするヤンキースとメッツの対戦の別称。両球場が地下鉄で結ばれていることから名付けられた。球場間の距離はわずか16キロで、地下鉄では45分。交流戦がスタートした97年からの対戦成績は、14日現在でヤ軍の56勝41敗。今季は4試合(4連戦)で、ヤンキースタジアムで2試合行った後、シティ・フィールドで2試合。

 ≪64年ぶり≫ヤ軍でメジャー1年目の開幕6連勝は、左腕フォードが1950年に9連勝をマークして以来64年ぶり。新人の完封は、キューバ出身の右腕ヘルナンデスが98年9月にレッドソックス戦で記録して以来となった。デビュー8試合目での完封は、95年のドジャース・野茂の11試合を抜き日本選手最速。レンジャーズ・ダルビッシュ、マリナーズ・岩隈は3年間で完投が1試合もなく、メッツ・松坂も8年間で完投が1試合で完封は1試合もない。

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