呉昇桓 初のイニングまたぎも零封「準備はしていた」

[ 2014年5月14日 08:46 ]

<広・神>延長10回に続き11回もマウンドにあがった阪神・呉昇桓

セ・リーグ 阪神1―2広島

(5月13日 米子)
 来日初の“イニングまたぎ”も、勝利を呼び込むことはできなかった。阪神・和田豊監督(51)が13日の広島戦(米子)の延長10回2死満塁で呉昇桓(オ・スンファン)投手(31)を投入。全5球ストレートでエルドレッドを空振り三振に仕留めると、続く11回も無失点に封じた。だが、12回に二神がサヨナラ弾を浴びて、和田監督の執念采配も実らず。首位・広島とは4差に広がった。

 幕切れはあまりにもあっけなかった。延長12回、二神が先頭・梵に左越えへサヨナラ被弾。その数分後に会見場に現れた和田監督も、まだ消沈したままだった。

 「(先発の)晋太郎もよく投げたし、あとのピッチャーもよく投げてくれた。(延長10回2死満塁となり)あそこで抑えられるのはスンファンしかいないよ…」

 1―1の延長10回2死満塁でエルドレッドを迎えると、阪神ベンチは呉昇桓を投入。開幕から1イニング限定での起用を続けてきたが、初めてその“禁”を破ってでもこの絶体絶命のピンチを切り抜けたかった。そして守護神は期待に応えた。

 「準備はしていた。(事前に)話はあったが、なくても昔やっていたからね」

 広島の4番打者に2ボール2ストライクから外角高め149キロで空振り三振を奪った。全5球がストレート。指揮官の言うように、この場面でこんな芸当は呉昇桓にしかできないだろう。

 初めてイニングをまたいだ延長11回も、さすがだった。1死から田中に三塁打を打たれたが、表情一つ変えない石仏が頼もしかった。続く木村を敬遠し、石原との勝負を選択。3球目にスクイズを仕掛けられたが、絶妙のグラブトスで間一髪生還を許さなかった。「手で取っていては間に合わない」。そして中東を6連続ストレート勝負で空振り三振とした。全30球のうち9割の27球が石直球だった。

 親日家として知られ、少年時代から日本野球に憧れていた。マンガはふだんは読まないが、手にした数少ない一冊が「王貞治」の伝記本。「自分の仕事はできたとしても、チームが勝たないと意味がない」。個人記録よりも大事なものがあることを教えてくれた一冊だった。

 和田監督にしてみれば、呉昇桓が降りてからの「あと1イニング」の戦力が足りなかったのは痛恨だが、決して采配ミスが生んだ一敗ではない。4時間30分の激闘の末の敗戦は手痛いが、それでも守護神の存在が頼もしく映ったゲームだったはずだ。

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2014年5月14日のニュース