岸 78人目ノーヒッター!“準完全”に「まさかです」

[ 2014年5月3日 05:30 ]

<ロ・西>ノーヒットノーランを達成した岸は捕手・炭谷と抱き合う

パ・リーグ 西武2―0ロッテ

(5月2日 QVC)
 西武・岸孝之投手(29)は2日、敵地でのロッテ戦で史上78人目(通算89度目)の無安打無得点試合を達成した。許した走者は初回2死からの四球による1人だけの「準完全試合」。チームは2―0で勝った。岸は07年に西武入りし、この日が今季3勝目、通算79勝目だった。東日本大震災で甚大な被害を受けた宮城県仙台市出身。親会社が西武になって以降では、1985年の郭泰源、96年の渡辺久信に続いて3人目の快挙で、細身の本格派右腕が、黄金期を支えた偉大な先輩たちに肩を並べた。

 快挙を目前にしても、臆することなく、ぐいぐいと押した。117球目。28人目の打者・荻野貴に速球を続けて追い込んだ後のチェンジアップで一邪飛に打ち取ると、岸は両手を広げた。史上78人目のノーヒットノーラン達成。しかも、出した走者は初回2死から井口に与えた四球による1人だけで、二塁も踏ませない準完全試合だった。

 「まさか、まさかです。うれしいしかない。やっぱり真っすぐですね。最初から最後まで良かった」

 球速は140キロ前後ながら、QVCマリンの最大風速6メートルの風が後押しした。5回終了時の恒例の打ち上げ花火も中止になるほどの強風。マウンドへの向かい風で球のスピンが増し、各打者の手元で浮き上がる。27個のアウトのうち、ゴロが7個に対して飛球は12個だった。この試合を迎えるまで、ロッテ戦でもQVCマリンでも7連勝中。得意の球場で、相性のいい相手を圧倒した。

 プロ8年目の今季。涌井がロッテにFA移籍し、入団から7年で6度の2桁勝利を挙げている岸はチームをけん引する存在となった。オフには3年総額最大12億円の大型契約も結んだ。しかし、「エースと呼ばないで」と言い続けた。それは西武で前回(96年)ノーヒットノーランを達成した渡辺久信前監督(現シニアディレクター=SD)の言葉を胸に刻んでいたからだった。渡辺SDは言う。「岸にずっと言い続けてきたことは“エース対決に勝て”ということ。そうすれば、11、12勝の投手から15、16勝の投手になれると言ってきた。真のエースになるためにね」。昨季は自身初の開幕投手を務めながら、各球団とのエースとの投げ合いに開幕3連敗。2年連続で開幕投手となった今季も同様で、この日も成瀬との対戦。ただ「(その方が)緊張感を持続できる」と精神面で一回りたくましくなった。春季キャンプでも独自調整を貫いた。捕手を座らせて投球練習したのは18投手の中で一番最後で、ブルペンでも本塁の5メートル後方に捕手役を立たせ、野茂英雄氏が現役時代に取り入れていたように傾斜を使った遠投で肩をつくっていった。

 丸刈りになるのが嫌で、高校は無名の名取北(宮城)への進学を決めた細身で長髪の右腕が、「(今後の目標は)1つでも多く、チームを勝たせることです」と言うまでになった。自他ともに認める西武のエースへ。この日の快挙はその始まりにすぎない。

 ◆岸 孝之(きし・たかゆき)1984年(昭59)12月4日、宮城県生まれの29歳。名取北では甲子園出場なし。東北学院大から06年大学生・社会人ドラフト希望枠で西武入団。07年4月6日のオリックス戦でプロ初勝利。08年12勝を挙げ、巨人との日本シリーズでも2勝でMVPを獲得して日本一に貢献。1メートル80、70キロ。右投げ右打ち。血液型A。

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