日米に見る始球式の違い 米はOB、日本はタレント多い

[ 2014年4月13日 06:07 ]

3月28日の中日―広島線で始球式に登場したキンタロー。

 日本のプロ野球が開幕して10日あまり、海の向こうではMLB(メジャーリーグ)も本格的に開幕した。日本時間5日にはヤンキースに移籍した田中将大がMLB初勝利を挙げるなど、今シーズンも日本のプロ野球とともに注目が集まるだろう。

 ヒューストンで行われたアストロズvsヤンキースの開幕戦では、MLB通算324勝をマークした伝説の名投手ノーラン・ライアン氏が始球式に登場。現地では田中将大も、日本とは異なる開幕ムードを満喫したようだ。日本でも開幕戦では各球場で多くのアイドルやタレントが始球式に登場した。今回はその始球式についてクローズアップしてみよう。

◎始球式の起源とは?

 今では当たり前になっているマウンドから投げる様式は、日本独自の文化であるという説もある。その起源は1908(明治41)年11月22日、アメリカから遠征してきた「リーチ・オール・アメリカン」というプロ野球チームが、早稲田大学野球部と対戦。その試合に先立って当時の早稲田大学総長・大隈重信氏がマウンドから投じた儀式が、始球式の始まりだといわれている。ソフト帽をかぶり、羽織袴を着た大隈氏が投球している写真を見たことがあるだろう。

 当時の記録には「(大隈氏の投球は)ミットに高らかに飛び込んだ」とある。しかし実際は、打席に立った早稲田大の学生が「大隈総長の投球を打っては失礼だ」と遠慮してわざと大振りした説がある。これとは別に、大隈氏の投球が大きく外れてしまったので「ボール球と判定されてはいけない」と、わざと空振りしてストライクの判定にしたという説もある。いずれにせよ、これが始球式で打者が空振りする起源となったのだ。

◎日本とは異なる米国式始球式

 実はアメリカでも始球式の起源について、はっきりとした記録は残っていない。1910(明治43)年4月14日に行われたセネタースvsアスレチックス戦で、当時のウィリアム・タフト大統領が投げたのが起源と言われている。

 このときは観客席に座っていたタフト大統領が、グラウンドにいる捕手に向かってボールをトスして、始球式としていた。MLBの始球式はこの様式が一般的であり、日本式のマウンドから投げる始球式が広まったのは最近のことだ。

 ちなみにタフト大統領は歴代アメリカ大統領の中でも最大級の巨漢で、体重が140キロ以上あったといわれている。入浴中にはホワイトハウスのバスタブに体がハマってしまい出られなくなった、というエピソードもあるそうで、側近がタフト大統領の運動不足を心配して、MLBの始球式を行うよう勧めたという話も残っている。

◎レジェンドたちが投げるメジャー、投げない日本

 MLBの始球式では、そのチームの伝説のOB選手が登場するケースが多いようだ。その一方、日本野球界の始球式には、アイドルやタレントが登場することが多く(宣伝という事情もあるだろう)、あまりOB選手が投げる機会は少ない。

 むしろ、OB選手は始球式よりもセレモニーに登場することのほうが多い。例えば、今年の開幕戦。巨人vs阪神の試合前に行われた巨人の球団創設80周年を記念した華々しいセレモニーには、OBや球団スタッフら総勢203人が参加した。一、三塁側とバックスクリーン後方から登場した“レジェンド”たちは、長嶋茂雄終身名誉監督、金田正一氏を中心に椅子に座って球団の歴史を紹介する記念映画「THE GIANTS」を、ファンとともに鑑賞した。巨人ファンならずとも、素晴らしいと感じる出来だったようだ。

 最近では復刻ユニフォームで試合をする際にOBが登場することが増えてきたように、開幕戦以外でも、どんどんチームの歴史やレジェンド選手に敬意を払うような場を用意するのはどうだろうか。巨人とともに日本プロ野球が始まって80周年という機会に、過去と今を繋ぎ合わせていくことで、プロ野球はもっと盛り上がるような気がする。(『週刊野球太郎』編集部)

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2014年4月13日のニュース