履正社 裏方徹した主将が9回同点弾 好きな言葉は「男の花は耐えて咲く」

[ 2014年4月2日 05:30 ]

<豊川・履正社>10回無死満塁、勝ち越しとなる押し出し死球を受け、吠える履正社の金岡

第86回選抜高校野球大会準決勝 履正社12―7豊川

(4月1日 甲子園)
 準決勝が行われ、履正社(大阪)と龍谷大平安(京都)が、ともに初優勝に王手をかけた。履正社は金岡洋平主将(3年)が9回に同点のソロ本塁打を放ち、延長10回の末に豊川(愛知)を12―7で下し、春夏通じて初の決勝に駒を進めた。夏に3度全国制覇した龍谷大平安は、2回に徳本健太朗外野手(3年)の2点本塁打などで3点を先制し、8―1で佐野日大(栃木)に快勝。圧倒的な攻撃力で勝ち上がってきた両校、センバツ決勝での京阪対決は史上初めてとなる。2日の決勝は午後0時30分プレーボールの予定。

 背番号13をつけた主将の一振りが絶体絶命のチームを救った。4点差を逆転された直後の9回。6回から途中出場で中堅に入っていた履正社の金岡が、先頭で左翼席に放り込んだ。「みんながここまで頑張ってくれたので助けられたら、と思っていた。いい角度で打球が上がったけど、入るとは思わなかった。思った以上に伸びてくれた。人生の中で一番のバッティング」

 7回に今大会初の打席が回り、2打席目。3ボール1ストライクからの5球目。狙った直球にバットを振り抜くと、風に乗った打球はスタンドで弾んだ。高校では試合はもちろん、普段の打撃練習でさえ一度もオーバーフェンスのなかった主将の一撃。ダイヤモンドを回り終えてベンチに戻ると、興奮したチームメートにもみくちゃにされながら涙を流した。

 延長10回は無死満塁の絶好機で再び打席に立ち「ついているんじゃないかと思った」。初球の抜けたような投球が左の肩口に当たり、死球で勝ち越し点が入った。

 長尾中(兵庫)3年の夏、試合で左翼フェンスに激突し、両手首を複雑骨折した。「試合に出ててんぐになっていました。ベンチで、試合に出られない選手の気持ちがよく分かりました」。昨夏の大阪大会決勝で大阪桐蔭に敗れた翌7月29日に主将に指名された。穏やかな性格で人望が厚かったことに加え、「指示待ち族」の部員が多い中で、金岡は自ら考えて練習する選手だったからだ。

 昨秋の公式戦では控え。甲子園でも守備固めが続く中で、中学時代の経験を大切にした。集合時間の確認、道具の運搬、不調の選手への激励…。主将の仕事は多岐にわたる。チームの士気が緩めば、やり玉に挙がる。それでも金岡は、やりがいを感じる。好きな言葉「男の花は耐えて咲く」を地でいく男だ。

 献身的に支えた主将がスポットライトを浴び、チームの士気は最高潮に達した。延長戦を制するのも必然だった。岡田龍生監督は「子供たちの潜在能力は素晴らしいものがある」と脱帽し、決勝戦については「平安のウイークポイントは見つからないが、準決勝のような粘りを出すしかない」と言葉に力を込めた。

 金岡主将も「ここまで苦しい試合をものにしてきた。決勝も厳しい戦いになると思うが、まずは気持ちで負けない」と精神面を強調。その目には自信がみなぎった。

 ≪夏含めると68年ぶり2度目≫センバツで大阪勢―京都勢の決勝は今回が初めて。夏を含めると46年の浪華商(現大体大浪商)―京都二中(現鳥羽)以来68年ぶり2度目。決勝以外を含めた大阪―京都の春夏通算対戦成績は、今大会準々決勝の履正社―福知山成美まで8勝8敗と互角だ。センバツで隣同士の都府県による決勝は92年の帝京(東京)―東海大相模(神奈川)以来。

 ≪今大会7戦目延長≫第1試合の履正社―豊川戦は延長10回で決着。今大会7試合目の延長となり、99年の71回大会以来15年ぶりに、最多タイ記録となった。

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