熊崎コミッショナー構想 日本野球の復権 海外から選手が来たい球界に

[ 2014年3月26日 08:12 ]

今年中に“日米トップ会談”へ臨むことを明かした熊崎コミッショナー

 開幕まであと2日――。プロ野球80周年の節目に就任した熊崎勝彦第13代コミッショナー(72)を直撃した。統一球の無断変更が招いた球界の混乱。加藤良三前コミッショナー(72)が昨年9月に引責辞任すると、日本野球機構(NPB)改革の旗手として1月に就任。元検察官らしい情報収集力を生かしながら現場で陣頭指揮を執る。日本野球の復権を掲げ、今年中に大リーグ機構(MLB)のバド・セリグ・コミッショナー(79)と日米トップ会談へ臨むことも明かした。

 ――就任するとNPBの組織改革に着手。侍ジャパンを核にした事業展開など国内基盤の強化を図る一方、国際交渉力の重要性を訴え、日米コミッショナー会談開催も視野に入れている。

 「今年中に実現できればと思う。(セリグ氏と)忌憚(きたん)なく意見交換する中で互いが分かってくる。分かり合う中で物事が解決することもある。商売でも何でもそうだと思う。僕は必要とあれば会う。(交渉の)窓を閉ざすつもりはない」

 ――ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)をめぐる不平等関係の改善、昨年の新ポスティング制度の成立など日米間交渉で、これまでコミッショナーが果たした役割は少なかった。

 「ポスティング制度も今は協定としてきちっと守っていく。だけど(16年10月末の見直し)時期が来たらまた(改正の)議論が起きると思う。WBCもいろんな意見がある。またアジアの野球の中で日本がどういう役割を果たせるか、日本の考え方を議論しながら発信する。つまり物を言う、というのがあってしかるべき。日本の野球界の存在感を世界に示すべき」

 ――これまでは統一球の導入やボールとストライク表示の入れ替えなど「MLBルールとの同化=国際化」だった。今季からMLBはビデオ判定を拡大した。日本も追随する流れか。

 「日本は球場設備など物理的な難しさもある。ただ、僕は人間が判断していく崇高さ、これは大事にしていかないといけないと思っている。プロ野球は明るい社会の一翼を担うもの。ファンは公正さに信頼を寄せる。そこに本当の意味の感動や共感や潤いが出てくる。客観的に正しいという判断は生命線。(NPBの)審判の皆さんはそこを究明しながら仕事しており、哲学、精神がある。それはひしひし伝わってくる。そこは最大限に尊重したい」

 ――ビデオに頼りすぎると「審判は絶対」という野球の本質を失いかねない。

 「人間の業だから。神様じゃないから何らかのミスはある。それをどう補完するか、そこは慎重に判断しなければいけないが、日本にある野球道、精神道を磨いていくことも大事。日本の審判技術は物凄く高い。メジャーとすぐイコールだとは捉えない。日本の野球、審判、国民性。そういうものを総合的に見て、日本が日本の野球をどういうふうに極めていくかということを機軸に置きながら慎重に考えていく。国際化も大事だけど我々は日本人なんだから」

 ――球界の運営、ビジネスにおいてセ・リーグとパ・リーグで方向性の相違はあるが。

 「互いに長い伝統があり、気風的な違いもあるかもしれない。だが僕にはセとパの違いはない。コミッショナーの立場で両方の協力がなければ仕事ができない。セとパがある以上は完全な融合はないかもしれないが、プロ野球全体を支えることを両リーグとも考えていると信じている。僕は野球の母船は一つだと考えている。セもパも事務局も選手もファンもみんな一つに乗船している。野球の発展には大きな母船が力強いものである必要がある。全体を考えないといけない」

 ――いよいよ開幕。

 「今年の野球はだんご状態でいつも順位が入れ替わり、なだれ込むような激闘をセもパも144試合やってもらいたい。(ヤンキース入りした)マー君には活躍してほしいし、活躍すれば青少年に夢を与える。逆を言えば日本の野球が空洞化するという指摘もある。それも寂しい」

 ――魅力あるプロ野球とは。

 「日本の野球はレベルが高い。かつ試合が面白いということが一番大事。ポスティング制度は今、日本から向こうに行くだけ。海外から来たいという日本球界にならなければいけない。それにはレギュラーシーズンが面白いことが機軸になってくる。ペナントレースを魅力あるものにしないといけない。侍ジャパンの事業拡充に力を入れるけど、各球団はそれに負けないようにやってるし、やらないといけない。互いに切磋琢磨(せっさたくま)しながら、野球界全体を力強いものにしようじゃないか。それに異論のあるものはいないと思う」

 ◆熊崎 勝彦(くまざき・かつひこ)1942年(昭17)1月24日、岐阜県生まれの72歳。明大を経て72年に検事となり、東京地検特捜部長、最高検公安部長歴任。特捜部ではリクルート事件など一線の捜査を担当。05年1月からNPBのコミッショナー顧問。熊崎勝彦綜合法律事務所所長も務める。関西テレビの「あるある大事典」捏造(ねつぞう)問題では社外調査委員会委員長。時代劇ドラマへの出演経験も持つ。

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