159キロ剛球が一転、凶器に…打球顔面直撃 試合打ち切りに

[ 2014年3月21日 05:30 ]

<ロイヤルズ・レッズ>6回、打球を顔面に受けて倒れ込むレッズのチャプマン

オープン戦 レッズ3―6ロイヤルズ

(3月19日 サプライズ)
 159キロの剛球が、自らの悲劇を招いた。19日(日本時間20日)に行われたロイヤルズ―レッズ戦の6回、レ軍の守護神アロルディス・チャプマン投手(26)が打球を顔面に受け、左目上と鼻を骨折した。99マイル(約159キロ)直球をロ軍のサルバドール・ペレス捕手(23)が捉えたライナーが直撃。試合はそのままコールドゲームで終了した。同戦に出場したロ軍の青木宣親外野手(32)も、ぼう然とその光景を見守った。

 球場内が一瞬にして静まりかえった。6回2死満塁。左目付近に打球が当たったチャプマンは崩れ落ち、うつぶせになって足をばたつかせた。ボールは三塁ベンチ付近まで転々。タイムがかけられ、レ軍選手や首脳陣、トレーナーら関係者が駆け寄った。観戦していたチャプマンの父親もいた。この回の先頭打者だった青木は、ベンチで沈痛な表情を浮かべていた。

 打球の当たった音が右翼の守備位置まで聞こえたというブルースは「野球人生で経験した最も恐ろしい出来事」という。キューバ出身のチャプマンは最速105マイル(約169キロ)を誇るメジャー随一の剛球投手。自慢の速球をロ軍の強打者ペレスが叩き、すさまじい「凶器」となった。ロ軍のネド・ヨースト監督は「銃弾のように鋭い打球が当たった」と表現した。

 レ軍のブライアン・プライス監督は直後の状況を「彼の意識はあった。呼び掛けに反応できたし、手や足も動かしていた」と説明。しかし、オープン戦ということもあり、両監督の協議の結果、試合は6回2死で打ち切りとなった。ヨースト監督は「試合を続行できる状況ではなかった。公式戦なら続けることもやむを得ないかもしれないが、その必要がなくてよかった」と振り返った。

 チャプマンは救急車でアリゾナ州内の病院に緊急搬送され、左目上と鼻の骨折が判明。さらなる検査のため、同州の別の病院に入院した。関係者によると、命に別条はないとみられるが、12年アスレチックス時代に打球を頭部に受けたダイヤモンドバックスのマッカーシーは「詳細に調べるまでは、あらゆる情報は無意味だ」と自身のツイッターで述べ、気遣った。

 大リーグでは今季から強い打球から投手の頭部を守る特殊な板を縫いつけた帽子の使用を認めた。だが大きさや重さなどの面で不評。チャプマンもかぶっていなかったが、米スポーツ専門局ESPN電子版は「(打球の速さや方向などの面で)今回のケースではかぶっていても役に立たなかっただろう」と分析した。

 打ったペレスはマウンド付近で祈るようにひざまずき、ベンチ裏では目に涙を浮かべていた。両軍監督とブルース以外は取材対応を自粛。3戦連続マルチ安打となる2安打2打点と活躍した青木も、最後まで硬い表情のまま球場を引き揚げた。

 ◆アロルディス・チャプマン 1988年2月28日、キューバ生まれの26歳。05年に国内リーグでデビューし、09年の第2回WBCに出場した。同年7月のオランダ遠征時に亡命し、10年1月にレッズと6年総額3025万ドル(約31億1575万円)で契約。昨季は68試合に登板して4勝5敗38セーブ、防御率2.54。自己最速は105マイル(約169キロ)。1メートル93、93キロ。左投げ左打ち。

続きを表示

この記事のフォト

2014年3月21日のニュース