“現代の魔球”スプリットは「劇薬」スライダーが代償になるケースも

[ 2014年3月14日 07:30 ]

9日のヤクルトとのオープン戦で雄平(右)にスプリットを左前に運ばれ、苦笑いの前田健

 ニューヨーク・ヤンキースの一員となった田中将大が、メジャー(オープン戦)で最初に奪った三振の決め球は、昨季の「24連勝」の原動力にもなった伝家の宝刀・スプリットだった。

 フォークボールよりも浅い握りのため、球速も制球力も増すというスプリット=スプリットフィンガード・ファストボール。今年から広島の前田健太も習得を目指し、紅白戦などの実戦登板では早くも手応えを掴んでいるという。

 現代の魔球ともいえるスプリット。だが、「弊害もある」と語るのは、昨季、この決め球を武器にボストン・レッドソックスの世界一に貢献した上原浩治だ。最近、上梓した自著『不変』(小学館)の中で、「大学時代は、スライダーが僕の最大の武器だった」にもかかわらず、スプリット(巨人時代のフォーク)を憶えたことで、「スライダーの投げ方がわからなくなった」、「プロ2年目以降、あまりスライダーを投げなくなった」という、投手としての変化を綴っている。

 思い返せば田中もまた、入団当時は高速スライダーが武器だった。しかし、徐々にその比重が減り、特にピンチの時やここぞという場面ではスプリットを多用するようになっている。そして、今季からスプリットを投げ始める前田健太も日本屈指のスライダーを投げている。今後、前田健太のピッチングが変わっていくかに注目したい。

 何かを得れば何かを失ってしまう……ある意味、人生の真理のようでもある。「劇薬」のようなスプリットがもたらすこの先の彼らの野球人生、下降しないことを祈るのみだ。
(『週刊野球太郎』編集部)

 ▼『週刊野球太郎』(http:/yakyutaro.jp/)とは イマジニア株式会社ナックルボールスタジアムが配信するスマートフォンマガジン(auスマートパス、docomo SPモード、Yahoo!プレミアムで配信中)。母体となるのは雑誌『野球太郎』。ドラフト関連情報はもちろん、ディープな記事に定評がある野球愛好家のバイブルともいってよい存在。現在、全国書店にて『別冊野球太郎2014球春号~プロ野球呪いのハンドブック』が発売中。スプリットのような功罪両面から野球が楽しめる、新たな観戦術を提案している。また、3月10日にはプロアマ1200名以上の選手を一人一人細かく紹介する『野球太郎No.008~2014プロ野球&ドラフト候補選手名鑑』が発売された。

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