呉昇桓 スプリット初披露 “石直球”に“落石球”で威力絶大

[ 2014年2月19日 05:30 ]

スプリットを投げる呉昇桓

 阪神の新守護神として期待される呉昇桓(オ・スンファン)投手(31=サムスン)が、沖縄・宜野座村野球場で行う春季キャンプ第4クール初日の18日、4度目となるブルペン入りで、来日後初めてスプリットを投じた。140キロ台を計測する落差のある高速ボールで、ヤンキースの田中やレンジャーズ・ダルビッシュのようにフォークと投げ分けて使う。平均150キロの「石直球」とのコンビネーションは、大きな武器となりそうだ。

 ブルペンで46球目を投じる前に、呉昇桓は藤井にボールを挟むしぐさを見せた。次の瞬間、右腕から繰り出された白球は直球の軌道から、急降下してミットに収まった。3球連続で、日本初披露となるスプリットを投じた。

 「自分はそうは思わないよ」

 落差だけでなく、速さも伴っていたという報道陣の問いかけに「石仏」は照れくさそうに首を振ったものの、左打席に立っていた山田バッテリーコーチはこう証言した。

 「良いよ。速い、速い。スプリットだから、落差はいらないけど、あのスピードで落とせばバッターは怖いよね」

 スプリットはフォークより球速が速く、打者の手元で小さく落ちる。フォークに比べてボールを浅く挟み、近年では楽天からヤンキースに移籍した田中がウイニングショットとして使用。レッドソックスの上原もメジャーの強打者をスプリットでねじ伏せ、チームをワールドシリーズ制覇に導いた。

 田中やダルビッシュは深く挟むフォークと投げ分けて使っており、呉昇桓も「(ボールの握りを)広くすると、スピードは落ちるが、ボールが落ちる角度は大きくなる」と、2種類を投じていく考えを明かした。

 スプリットは昨年習得したばかりの球種とあって、韓国時代もフォークとの併用はほとんどない。それでもブルペンを視察した楽天の山口プロスカウトグループマネジャーは「マー君はスプリットとフォークの2種類を投げる。ダルビッシュもそう。超一流は投げ分けられる。彼(呉昇桓)ぐらいだったらそれもできるだろう。阪神に驚異のピッチャーが入って来たなという印象」と、メジャーリーガー2人をだぶらせた。

 球団関係者は「(シーズンに入れば)143、144キロぐらいは出る」と高速スプリットであることを明かした。実戦デビューとなる20日の紅白戦(宜野座)では、鳥谷、新井、マートンら主力打者に対していきなり“高速兵器”を試す可能性もある。

 「バッターと対戦してみないと(スプリットが有効かは)分からない」。本人は謙そんしたものの、平均150キロを計測する重い「石直球」に注意を払わなければいけない中で、初披露されたスプリットは、まさに他球団にとっては“落石球注意”。日を追うごとに存在感が増していく。

 ▽スプリット・フィンガード・ファストボール(SFF) フォークと同じように人さし指と中指を広げて挟むが、フォークより浅く握るため球速もあり、直球に似た軌道から縦に小さく落ちる。スプリット(split)は分裂、分割の意。

 ▽フォーク 人さし指と中指を大きく広げて握り、腕の振りは直球と同じでボールに回転をかけないよう、抜くように投げる。ボールの回転数が少ないため、揺れながら大きく変化する。スプリットに比べてコントロールが難しいとされる。

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