川上哲治氏お別れの会 王氏、教わった「野球人の心構え」

[ 2013年12月3日 05:30 ]

お別れの言葉を述べる王氏

 「打撃の神様」「V9監督」として知られ、10月28日に93歳で死去した元巨人監督の川上哲治氏のお別れの会が2日、東京都内のホテルで行われた。9年連続日本一を支えた巨人・長嶋茂雄終身名誉監督(77)やソフトバンク・王貞治球団会長(73)ら約900人(一般約300人)が参列。王会長が代表してあいさつし、天国の恩師へ感謝の言葉を述べた。

 祭壇に飾られた故人の写真は、柔和な笑みをたたえている。監督時代のユニホーム姿。勝負の鬼と言われたV9監督がめったに見せない優しい笑みを見上げ、王氏はこみ上げる思いをかみしめながら弔辞を読み上げた。

 「プロ野球人の心構えを教えていただいた。9連覇は川上監督でなければなし得なかったと言い切れます。勝利への執念の結晶。笑顔の川上さんの写真を見て、いかに偉大だったか知りました」

 恩師へ贈る感謝の思いは尽きない。弔辞の文面はiPadに何度も下書きを繰り返し、この日朝まで文面に手を入れたという。「世界の王」の脳裏には思い出が次々によみがえってきた。61年の日本シリーズ前、土砂降りの雨の多摩川グラウンドで打撃練習。勝利への執念の強さを思い知った。グラウンド外でも負けず嫌い。麻雀でもゴルフでも「勝負に徹していた。とてもまねできない」という。

 厳しく、そして愛情にもあふれていた。スランプに陥った71年シーズンの大阪遠征。宿舎で「俺について来い」と言われ、車で一緒に向かったのは京都の一流料亭「一力亭」だった。威風堂々と料亭の廊下を歩く姿は日ごろのイメージとは全く違う。「新鮮な一面を見て、スランプも脱出できた。川上さんとの距離が近づいたその一夜は忘れ得ない」。西鉄(現西武)を下して日本一となった63年、日本シリーズ第7戦の試合後に「(敵地で)危ないから外出禁止」と言われた。「そこまでして選手を守る心遣いがある人だった」

 お別れの会に際し、天皇陛下から祭粢料(さいしりょう)を賜った。思えば54年前の59年、球界の繁栄を一気に加速させたのが天覧試合。当時コーチだった川上氏の監督就任はその2年後。そして65年から不滅のV9が始まった。王氏は最後にこう言った。「これからも、川上さんに恥じないように、怒られないようにファンに感動を与え続けないといけない」

 「打撃の神様」「V9監督」は球界の今後の繁栄を、天国から柔和な笑顔で見守っている。

 ▽祭粢料 神前にささげる供物という意味。皇族が葬儀に下賜(かし)する金員で一般の香典にあたる。金額は明らかにされていない。今年1月には心室頻拍(ひんぱく)で死去した元横綱・大鵬の納谷幸喜さん(享年72)に贈られている。

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